ハーメルン
金髪さんのいる同盟軍
第014話:”When a Woman fall in Love a Man”




バーラト星系、主星ハイネセン……
自由惑星同盟全体の首都ともいえる星である。

そしてそこに降り立ったリンチ少将、それにヤンとラインハルトはまるで星その物が鳴動したかのような、集まった民衆の喝采と歓喜の声によって迎えられた。

無論、主役は2.5倍の敵と戦い1000隻の艦隊を200隻以下まで減らされなお奮闘し、貴族を叩きのめし命がけで民を守ったリンチである。

”闘将リンチ”
”アーサー・ザ・ウォリアー”

早速、リンチの勇戦を称える横断幕が熱狂的に帰還を歓迎する市民達の間に見える。
無論、これらの勇ましすぎる二つ名は帰還前にマスコミが率先して流し、これ幸いと裏にいる政府や軍上層部がプロパガンダに用いたものだ。

だが、リンチは存外に賢しい(クレバーな)男だ。
後々のデメリットを考え自分独りだけ悪目立ちするのはよしとせず……

「愛すべき同盟市民諸君! 確かに私は勇戦した。志半ばで散っていった同胞達は、賞賛されてなお余りある……だが、忘れてはならぬ!! 戦ったのは私の艦隊だけではないのだということを!!」

演説の最中、同じ壇上にいたヤンとラインハルトを呼び寄せると肩を組み、

「我々が戦っただけでは300万を超える市民全員の脱出は叶わなかったろう! だから私は告げねばならん! 我々が敵を引き付けてる間、市民を率いて智謀の限りを尽くし戦場から脱出させた若き勇者、ヤン・ウェンリー中尉とラインハルト・ミューゼル少尉の存在を!!」

さっそく自分以外にも的を増やすことにしたようだ。

「努々忘れてはならぬ! 敵を倒すのは必然に過ぎぬ!! 同盟軍の本質とは市民軍であり、その真骨頂とは同盟市民の守護者たらんということを!! まさにこの二人の若者が成し遂げた偉業こそ、同盟軍のあるべき姿であることを!!」

そして一気呵成に持ち上げる。
見事な奇襲を喰らいきょとんとして反応が追いつかないヤンに、半ば諦めたように小さくため息をつくラインハルト……若いラインハルトの方が余裕があるのは、やはり”皇帝として生きた記憶”が混入しているせいだろうか?

「私はここに宣言する! 私の、いや同盟軍が誇る理念は! 理想は! 確かに次の世代に、未来に受け継がれたと!!」

そして高らかに、

「自由に誉れあれ! 同盟市民(リベレーターズ)に祝福を! 自由惑星同盟万歳(ハーレー・リバティ)!!」



☆☆☆



「や、やられた……」

なにやらげっそりした雰囲気を漂わせながら、ヤンはぼやいた。
所詮はただの中尉、せいぜい裏方の一人として終わるかと思ったのだが……

「シャトル降りてすぐに、勝ってもないのに戦勝式典なんぞに引っ張り出された時から嫌な予感はしたんだよ」

リンチ少将曰く、「とりあえず座ってりゃあいい。給料分だと思えば腹もたたねぇだろ?」とラインハルト共々その言葉に従ってみれば、あれよあれよと言う間に壇上に引っ張り出されてインスタント・ヒーローの仲間入りだ。

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