第015話:”プロローグのエピローグ、あるいはただの密談”
陰謀は常に人目の付かないところから始まる。
まあ衆目に晒された時点で陰謀ではなくなるので当然といえば当然だ。
そしてここ、”Liberty Planets Alliance”の士官学校の校長室でも、とある陰謀が現在進行形で行われていた……
「お久しぶりです、提督。いや、今は”シトレ校長”とお呼びした方が?」
とがっちりした体格の壮年の黒人男性、士官学校校長のシドニー・シトレは、
「ああ、久しぶりだな。私も”リンチ中将”と呼んだ方がいいかね?」
「さっそくですね」
と苦笑のアーサー・リンチ。
現在、消耗激しいエル・ファシル帰還組は全員1階級昇進(殉職者は2階級特進)となり、全員が2週間の休暇中だった。
いわゆる”御褒美休暇”だが、比喩でなく壊滅したエル・ファシル駐留艦隊の再建は難しく、リンチを筆頭に生き残り全員が休暇明けに昇進と同時に配置転換を受けることになっていた。
実質的には、新たな任地へ向かうための準備時間ともいえる。
蛇足ながらエル・ファシルには、別の星域を守っていた守備艦隊や警備艦隊から抽出予定の高練度部隊を再編、以前より艦数3倍に強化した正規分艦隊規模3000隻が新たに配備されるようだ。
しかも提督に就任予定なのは初老のベテラン、一兵卒からの叩き上げで将官へと駆け上った燻し銀の実力者”アレクサンドル・ビュコック”少将だというのだからガチ編成もいいところだろう。
しかも民主主義国家らしく腐敗はさほどしてなくとも国民の人気取りには余念のない政治家達は、エル・ファシルに首都惑星ハイネセンを守護する自動迎撃衛星群”アルテミスの首飾り”を配備するよう若手政治家勢力を中心に運動を始めたようだ。
その旗手となってる中心人物は、長く美しい金髪の持ち主で名を”ヨブ・トリューニヒト・セカンド”というらしい。
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