ハーメルン
金髪さんのいる同盟軍
第002話:”ヤン先輩とミューゼル後輩”

まあ、俺と違って融通が利くという言い方も出来るのだが……
後は私生活がアバウトすぎるのはどうにかした方がいいと個人的には思うぞ?



さて、ミス・グリーンヒルが去った後、俺と先輩は今後の展開を話し合っていた。

現状を端的に要約すれば、「マンハント目的の腐れ貴族艦隊がエル・ファシルに接近しつつある」ということだ。
マンハントとは文字通り”人狩り”、エル・ファシルの住人を帝国に連れ去り、男は農奴、女は性玩具として自ら使用する、あるいは転売するつもりだろう。

ロクなことをしない連中だが、それが貴族というものだ。
無理やり納得するなら”別の人生を生きた俺の記憶”も同じような主観をもっているようだ。

ただ問題なのは貴族子弟が金魚の糞のように引き連れてる艦隊が、エル・ファシル駐留艦隊より数的優勢ということだろう。



「総勢2500隻か……」

”もう一人の俺”の記憶によれば、別の展開があったようだが……

だが現状、エル・ファシルが陥ってる状況は極めてシンプルだった。
貴族艦隊は最初、1000隻程度で押しかけてきたが、防御陣形を敷きほぼ同数の艦で待ち構えていたリンチ少将率いるエル・ファシル防衛艦隊を見て交戦することなく後退した。

だが、彼らはそのままイゼルローンまで逃げ帰ったのではない。
どうやらよほど有力貴族の息子がいたらしく、イゼルローン要塞から同盟領方面に出ていた哨戒艦隊をかき集め、総勢2500隻の艦隊として逆襲を企てているのだ。

貴族は無駄にプライドが高く、面子を傷つけられたと解釈すると実に執念深い……

「リンチ少将の艦隊は約1000隻……さて、どうしたもんか」

そう頭をかく先輩だが……

「先輩が指揮すれば、このくらいの戦力差は引っくり返せるんじゃないのか?」

半ば確信を持った言葉が口から自然に出た。

「バカを言っちゃいけない。むしろ後輩、君のほうが勝てそうな気がするんだがね?」

まあ、俺に艦隊指揮を任せてもらえるなら、勝ってみせようじゃないか……って何を考えている?



「元気がいいな、坊主ども」

俺と先輩が話していると、のっしのっしという感じで一人の男が姿を現した。
付けた階級章は”少将”……エル・ファシルで少将といえばアーサー・リンチ少将だけだ。

俺と先輩は敬礼し、リンチ少将は返礼すると、

「堅苦しい話はなしだ。単刀直入に言う。ヤン中尉、ミューゼル少尉……民間人を連れて脱出できるか?」



☆☆☆



「……少将、どういう意味です?」

最初に口を開いたのは先輩だった。

「言葉通りさ、中尉……俺は1000隻を引き連れ、討って出るつもりだ」



そう言い放つリンチ少将の表情……俺には覚悟を決めた”漢”の顔に見えた。

[9]前 [1]後書き 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/2

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析