ハーメルン
金髪さんのいる同盟軍
第006話:”The Liberty Planets Alliance”




フリーがリバティに化けた理由は、おそらく自由惑星同盟の成り立ちその物が異なるからだろう。

長征1万光年を成し遂げたアレイスター・ハイネセンは、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムと同年代の人間であった。
アレイスターは、ルドルフが政界入りし独裁政権を確立した頃から危惧を抱き始め、銀河連邦に明確な禁止事項がなかった不備を突き、銀河連邦首相と国家元首を兼任した頃から明確な危機感を抱き”大脱出”の準備を具体的に始めたといわれている。

ルドルフが終身執政官を自称するようになり、それを既存の政治に絶望しすぎていた連邦市民が何の疑問を持たずに受け入れた姿を横目に見ながら、アレイスターは独裁政権から独裁政治への移行を確信し、自らと価値観を共有……民主主義の死を予感した”少数派の市民”達を集め、船を用意していった。

宇宙暦310年のある日
衆愚政治の成れの果て……その先にある時代を逆行するような専制君主の台頭が、大多数の連邦市民の歓喜により迎えられようとした頃、連邦各惑星からまるで通常の貨物運輸航行で出港するように数え切れない数の恒星間航行輸送船が10億の民を乗せて旅立った。

当時の宇宙船舶技術から考えれば、別名”ロンゲスト・マーチ”とも揶揄される1万光年にも及ぶ逃避行、オリオン・アームからサジタリウス・アームへの長征はあまりに過酷だったといえる。

その長き旅路の中で、散り逝く命や芽生える命も数多にあった。
その旅路の中で星の大海へ還った命の一つがアレイスターだった。

彼はこんな遺言を残している。

『もし我々がいずこかの星に根付き、再び人らしい営みを始められたら……いずれ我々はルドルフの亡霊たちと戦うことになるだろう』

と……

『親愛なる同胞達よ、恐れてはならない。その時がくれば我々はルドルフの呪いを断ち切る”解放者(Liberater)”となればよい。圧政を拒否し、圧政におびえる人々を守り、圧政に苦しむ人々のために戦う……人が戦う理由の中では、まともな部類だ』

そして奇しくもアレイスターが新天地を見ずに宇宙船で死去した日、生まれて10年となっていない銀河帝国では議会の永久解散が宣言され、共和制も民主主義も死滅したのだった……

アレイスターが後年、”預言者”説が実しやかに囁かれる出来事だった。



LibertyもLiberater(リベレーター)も、語源は同じくラテン語の自由を意味する”Liber”だ。
つまり自由惑星同盟とは、ハイネセンの遺言を嚆矢とし、いつの日か来るだろう「圧政者との戦い」に備える為に組織されたのだ。
そして同盟市民は、すべからくリベレーターとなったのだ。

同盟市民は、今も好んで自分達をリベレーターと呼称する。
アレイスター・ハイネセンの魂は、今もまだ忘れられてなどいなかった。

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