異彩
※天視点
赤木さんの娘だという蓮はやはりその血を受け継ぐかのように勝負の神様に愛されていた。
初戦、あの原田と同じ卓でトップを取った。
初めての戦いということでおそらく原田は本気を出していなかっただろう。それでもあのメンツ相手に勝ち切るのは並みの技量ではない。蓮は間違いなく麻雀の才能を持っていた。
だが、その後蓮は打たなかった。ひろに出番を譲り自分は会場の端で横になる。
蓮は何故かひろを買っていた。ハワイで打った時に何か感じるものがあったのかもしれない。卓を囲んだ者同士にしかわからないもの、そういうものもあるだろう。
最初の戦いは原田を後一歩のところまで追い詰めたが取り逃がしてしまった。だがそれによりひろゆきの麻雀が変わる。綺麗に勝とうとする打ち方からがむしゃらに何が何でも勝ちにいくやり方に。
結局蓮は最後の予選通過者を決める卓までひろに譲り、ひろもそれに応えるように最後の一席をもぎ取った。
この戦いを経たことでひろは格段に強くなった。これが蓮の狙いだったのだろうか。
予選が終わり3日後に本戦となる。本戦までに向こうに柄を攫われないように皆同じ場所で過ごそうという話になったのだが、そこでとんでもない事実を知った。蓮は麻雀をたったの3回しかしたことがないらしい。
役もあやふやで点棒計算もできないという初心者丸出しの状態だ。だからこそあの原田相手に突っ走れたというのもあるのかもしれないが、どんなルールになるかわからない本戦にその状態で連れていくわけにもいかない。
本戦までの3日間は蓮に麻雀を馴染ませることにした。それまでも打てていたのだから蓮が麻雀をしっかり呑込めるようになるまでにそう時間はかからなかった。
予選から3日後、仕上がった蓮と東のメンツとともに本戦へと向かう。新たなルールをいくつか決めていよいよ勝負が始まる。
最初の打ち手は蓮と俺だった。いらない牌を整理しつつ場を見ていく。その中で蓮の捨て牌は一際目立っていた。
いきなり索子のど真ん中が捨ててありその隣には筒子が並ぶ。混一色か清一色か、明らかに蓮は萬子で染めていた。
3日一緒に打っていて思ったのだが蓮はよくこういった打ち回しをする。自分の手の内を隠すことをしない。何を狙っているか周りにアピールしリーチすることにも躊躇いがない。一見、自分の手の内を晒すことは愚かに見えるが蓮の狙いは別にある。
初牌の字牌を蓮がツモ切る。混一色ではなく清一色、蓮の手の高さを感じ周りの空気がピリピリとしたものに変わる。
となれば皆もう萬子が切れない。手を回す。あるいは安牌の確保に移る。豪腕の麻雀、自分の手を曝け出し周りを下ろしにかかる、蓮の麻雀は降しの麻雀だった。
そしてついに蓮の手の内から萬子が溢れた。張ったのだろう。場の緊張感もいよいよピークに達する。
このまま上がられるわけにはいかないと思ったのか原田が東を鳴く。ここで交代だ。
10巡たったので順番に皆入れ替わっていく。蓮が赤木さんと交代し俺も銀さんと交代する。少し空気が緩んだがテンパイ濃厚なのが2人もいるのだから気が抜けない。張っていないものは降りだろう。銀さんも現物を切る。
そして何巡かした後赤木さんが三井から出た四筒をロンといった。え、と皆が驚く中赤木さんが手を倒す。四・七筒待ち、萬子ではなかった。
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