第11夜 教会の刺客
駆ける雷閃。飛び散る鮮血。
腹のど真ん中を貫かれ、臓腑ごと刳り貫かれたかのように大穴を開くブラドー。
場所から考えるに、重要な臓腑を幾つも失っている。こんな状態ではまず助かるまい。
そう思い、ようやくこの狂人との戦いが終わりを迎えたと思われた――その瞬間だった。
「ヌン――ッ」
いつの間に取り出したのか、ブラドーの空いていた左手にはあるモノが握り締められていた。
それは袋だ。赤い液体が満ち、その鮮やかさな色合いをまだ失っていない輸血袋だ。
その輸血袋を自身の右腕の、肌が露出した部位へと宛がうと袋に付いていた針で肌を刺し――その液体を体内へと注入する。
「――!?」
するとどうだ。
腹に開いていたあの大穴が、盛り上がった断面の肉によって見る見る塞がっていくではないか。
それを興味の目で見るか、それともあまりの悍ましさに目を背けるかは人それぞれとして。
グレンとゼーロスの連携によってようやく与えられた致命の一撃は、たった1つの輸血液によって無と帰し、その絶望した顔を完全回復したブラドーが静かに見つめていた。
「成程。確かに今のは危なかった……だが」
そんな言葉を吐きながら得物の血槌を振りかぶると、自らの感情の昂りに比例するかのように血槌の柄頭が肥大化し、その凶悪さを増していく。
「残念だったな――ここまでだ」
暗い感情を孕んだ声で言った後、今度こそ仕留めんとばかりに、己が出せる最大の力で以て槌の柄を握り締めて。
凶悪に膨れ上がった血棘の槌をグレンに振り下ろさんと動き、そして。
『――ヴォオオオオオァッ!!』
その凶行を止めるかのように。
槌を振りかぶったブラドーの体躯を――凶獣の拳が殴り飛ばした。
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