第15夜 悪夢からの刺客
「――では、諸君。参ろうか」
日を越え、光は落ちて闇が空を覆った刻。
隠れ家に集った、このサイネリア島にいる全ての狩人たちは、ヴァルトールの言葉の下、一斉に件の研究所へ向けて疾走を開始した。
とはいえ、彼らが直接白金魔導研究所へ真正面からぶつかるわけではない。
今回は数こそいれども、狩人たちは基本、大軍相手の戦いに弱い。
真正面からぶつかれば、それこそ布かれた防衛戦力によってたちまち囲まれ、全滅こそないが、戦力を大きく削られる可能性は大だ。
だからこそ、ガスコインを筆頭とする調査班は、もう1つの侵入口を探し、二日前、ようやくそれらしい場所を探り当てたのだ。
「——ぶっはぁ!」
水面を食い破るように、続々と浮き上る狩人たち。
軽装とはいえ、基本水中戦を行う機会がない彼らにとって、水中を泳ぐことは獣を相手に戦うよりも難しいかもしれない。
狩人装束に溜まった水分を限界まで絞り出し、改めて周囲を見回すと、そこは自然の底に埋もれていた場所とは思えない場所だった。
「……貯水湖か」
「ああ。話によれば、あの研究所の持ち主……ブラウモンとかいうジジイの魔術は、特に水が必要だそうだ。
時間をかけて人やら書物やらで奴さんの人物像や得手とする魔術、その魔術の性質を調べ上げた結果、水中を調べてみたんだが……」
「大当たり……だったな」
枯れ羽の狩帽子から水を絞り出しながらギルバートが言うと、その隣で斧を担ぎながら「おう」とガスコインが唸るように応じた。
「んで、調べた時に分かったんだが、どうもこの貯水湖。ただの水溜め場じゃあないらしい」
「……? どういうことだい?」
「アレだ」
担いだ斧の先端で前方を指し示すと、その先に見える水溜まりから、巨大なハサミが突如突き出でた。
それから続くように2本、3本、4本と。続々と水面を突き出るハサミ。
やがてそれらが6本に到達すると、ようやく本体もその姿を晒し、その悍ましい全貌を狩人たちの前に現わした。
「蟹か……それにしてもデカい」
「ハサミも6つときたか。これは、明らかに自然発生したものではないな」
「アレだけじゃないぞ。——見ろ」
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