第19話 『シャゴホット』
後ろを振り返り距離を測りながら前にと向き直る。
スネークはEVAの操るバイクに取り付けられたサイドカーに座り、周囲への警戒を強めている。
背後にはヴォルギン大佐が搭乗したシャゴホッド。
シャゴホッドにはミサイル発射時の一時加速を行えるようにロケットブースターを装備している為、最大速度を考えるとバイクで引き離せる相手ではない。
しかしそこはEVAの腕の見せ所。
基地内の狭い場所を縫うように走り、曲がり、誘導するように付かず離れずの距離を走らせているのだ。
立ち並ぶ施設が邪魔で巨体から上手く速度を出し切れないシャゴホッドは追い付けず、前脚を振り下ろして障害物を踏みつぶしながら突き進んでくる。
追いつかれないのは良いが手持ちでは倒せる手段が無い。
一生追いかけっこが出来る訳ではないのだ。
「どうするつもりなんだ!?」
「なにが?」
「あいつをどうにかしないとまずいだろ」
「大丈夫よ。この先に陸橋があって爆弾を設置しているの。だから――」
「分かった。奴をそこから落すんだな」
にこっと微笑むEVAに笑みを返して抑制器付最新鋭突撃銃XM16E1を構える。
建物の脇よりヴォルギンの兵士が跳び出してスネーク達を拒もうと銃を撃ちまくって来る。
何故こいつらはあんな奴の為に必死に戦うのだ?
疑問を頭の隅に追いやりながらトリガーを引く。
べつに殺す必要などない。肩でも足でも腹でもどこかに当てて戦闘不能にすればいいのだ。
粗方倒れ伏したらEVAはそのままバイクを走らせて突き進む。
「スネーク!」
「どうした」
「しっかり掴まっててよ!!」
いきなり速度を上げられて落ちそうになるが踏ん張り背後を振り返る。
シャゴホッドとの距離はまだあって誘導するのなら速度を上げて逃げるほどでは無い。
棟と棟の渡り廊下に集まった兵士が銃口を向けて来る。EVAはそちらを無視して突っ切ろうとしているのだ。
弾丸が飛び交う中を突っ切り、渡り廊下の下を通過すると輸送用のヘリが横向きで高度を下げて来る。
出来るだけ身を低く構えて通り抜ける。
さすがに生きた心地はしなかった。
安堵した瞬間、響いた衝突音。
振り返るとシャゴホッドが渡り廊下に接触したのだ。
施設の間を縫うように追って来たため速度は低く、被害は壁に亀裂が入ったぐらいか。
そう思ったスネークの前でシャゴホッドは前脚を大きく振り上げ、まだ仲間が居るにもかかわらず渡り廊下へと振り下ろした。
「味方をやったのか!?」
「スネーク!横!!」
「なにぃ!!」
滑走路に跳び出したスネーク達の左右に同じようにサイドカー付きバイクに乗った敵兵が殺到してくる。
舌打ちを打ちながらトリガーを引き続ける。
輸送ヘリより兵士が降りて銃を構えるがそれどころではなかった。
『邪魔だ!!』
吐き捨てるように叫ばれた一言を耳にして振り返る。
シャゴホッドの武装には重機関銃が積み込まれており、その二門が激しい轟音と共に弾丸を放つ。
目標はスネークを止めようと動いていた輸送ヘリ。
瞬く間に蜂の巣となって空中で爆散し、破片と火炎が降りていた兵士達に降り注ぐ。
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