ビギニング・レジェンド
――それは一つの伝説の終焉だった。
そこは電子世界の辺境地域。特に何もない荒野で、周囲にはターミナルを始めたとした施設など一つなく、近づくデジモンすら滅多にいない場所だった。
そんな辺境でその二体のデジモンの決着は生まれていた。
緑と青白だ。
全身が隆起した筋肉で覆われていて、その上からも鋼と何かの骨で作られた鎧を纏っている。左手には身の丈ほどもある巨大な骨剣が。もう片方は青と白の装甲、細見のシルエットに同色の鎌のような武装を手にしていた。緑は三メートルほどの巨体で、青白はやや小さく二メートルほど。
タイタモンとディアナモン。
それが二体のデジモンの名だ。共にデジモンとしては究極体、それもその中でも最高位。ディアナモンはデジタルワールドでもその名を轟かせるオリンポス十二神族の一角であり、それと同等に戦えるタイタモンもデジタルワールドでも最上位の実力者と言ってもいいだろう。
その二体の戦闘だからこそこの誰も何もいない場所は蹂躙し尽されていた。何もなかった場には地割れと洪水と猛吹雪が一遍の訪れたかのようになったいた。大地はタイタモンの骨剣で亀裂が刻まれ、その亀裂にディアナモンが生み出した氷で氷河になっている。どこもかしこも衝撃痕か氷漬けになっている場所ばかり。これらが凡そ数キロ、広ければ数十、数百キロ単位で広がっていた。究極体同士の決戦とはこれだけの被害がある。
しかしその戦いにも幕が引かれていく。
どちらも満身創痍という他になかった。それぞれの装甲は砕け、崩壊し、その下の肉体も血に染まって無事な所は欠片もない。タイタモンの各所のある角はほぼ全てが折れ、ディアナモンも月を彷彿させる装飾も悉くが原型を保っていない。骨剣も半ばまで折れて、ディアナモンの鎌もまた
膝を折ったのはタイタモンだった。
「……っ、あ、が……」
「もう終わりにしよう、タイタモン」
膝をつき、呻き声を上げるタイタモンにディアナモンは言う。
「我々へ戦いを挑んで何になるという。例え私を滅ぼして、その先に待っているのは修羅の道だ。いつか、絶対に終わってしまう。こんなことをして貴方に未来などない」
諭すように、さらには憐れみさえ載せた言葉で語り掛ける。
「……黙れ」
それでもタイタモンは吐き捨てる。最早彼に戦う力は残されていない。かろうじてデジコアは無事だがそれ以外のデータは壊滅的だ。ディアナモンとの三日三晩にまで及ぶ戦闘の果てに全ての力を使い果たしていた。
しかしそれでも、その瞳から力は消えない。
「俺は、貴様らを殺すんだ……ぶち殺して、ロードして……てめぇら全員残さず殺さねぇといけねぇんだ……」
声に力はない。しかしありったけの怨嗟が。戦う力を失ってもその執念は消えない。
それこそがタイタモン全てであるから。
オリンポス十二神族を滅ぼすためにこの深緑の鬼神が存在するのだ。
故に言うまでもなく、
「残念だ」
ディアナモンは最後の一撃は放つ。背に残った最後の突起を引き抜く。それは氷結の概念の結晶。最後の残った一矢だからこそ込められた力は膨大だ。今にも折れそうな鎌――クレセントハーケンにそれを番える。それこそが彼女たち、ディアナモンの必殺技。ありとあらゆる存在を凍結させる絶対零度。止めの一撃ととしてはこれ以外には在りえない。
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