ジオン公国公王デギン・ソド・ザビ
父上との会談が始まった。
なぜかデギンの下腹のふくらみや動きの緩慢さ、そういった老いを感じた俺は落ち着かなかった。
「父上は連邦との和平についてどうお考えですかな」
ジオン公国公王デギン・ソド・ザビ、
ジオン共和国建国の父であり、スペースノイドの自治独立とアースノイドの全宇宙移民を目指すジオニズムを提唱した元連邦議員ジオン・ズム・ダイクンを暗殺し、ジオン公国公王となった男。
「突然どうしたのだ、ギレン。わしはもう隠居した身よ、そういう事を言うことは控えるべきだろう」
よく言う、腹のなかでは連邦への憎しみと恐怖で揺れ動いているくせに……老いたな父上。
「そうですか、父上……」
ギレンの非道な戦略はお前譲りなんだぞ、お前の若い頃を見て真似した結果がコロニー落としや毒ガスなんだぞ、今更穏健派になりやがって!
というかお前シャアとセイラに謝れよ!
お前のせいでシャアはマザコン、ロリコン、シスコンという男の中の男になったんだからなっ!
この軟弱者! 老害! グラサンやろう! ハゲェー!
はっ! どうやら、ギレンの記憶、感情に流されて防衛反応で変な考えになっていたようだ。
冷静になろう。
なるほど、デギンをバカにしているのかギレンは。
急進派として一緒に戦った。
その姿をみて青春を費やした。
だがデギンはガルマの母が亡くなってから次第に気力をなくしていき、穏健派になった。
それにギレンは失望と苛立ちを感じていて、なおかつそんな己自身を認められずに、恥じているのか。
だからこんなにも落ち着かないのか。
この感情はひとまず置いて、冷静に考えよう。
今のデギンは俺を探っているんだろう、突然の和平についての話題だしな。
だがデギンのその一歩引いた目線がギレンには癪に触るんだろうな。
デギンの目線は大人の目線だ、ギレンの甘い考えを諭してくれるはずのものだが、ギレンにとっては臆した老害の戯言にしか受け取れないと言うことか。
だが俺が憑依しているからな。
デギンの力を借りてみせよう。
「父上、これをみていただきたいのです」
そう言って3Dモデルで戦闘を行うガンダムを見せる。
ギレンの頭脳と宇宙世紀の技術を使えば簡単にこういったものが作れた。
「これはなんだ、ワシにMSなんかを見せてどういうつもりだ」
戦闘の内容はようやく生産が開始されたばかりのリックドム6機とガンダムとの戦いだ。
バズーカを弾き、ビームライフルを撃つ、脅威的な性能を持つ事が素人にもすぐわかる映像だ。
「こ、これは……」
「これは連邦のMSですよ、父上」
「そうか……連邦もMSを作って来たか。それもこんなものを、お前が和平と言ったのはこれが原因か?」
そうは言うが、本気で信じてはいないんだろう、俺が適当に作った映像だしな。
狸だな。
「いえ、それだけではないのです。これを……」
その後、V作戦についての説明、MSの運用体系、連邦軍によるオデッサへの大反攻作戦、あとは連邦の大きな虫眼鏡についてもおまけで説明した。
あの虫眼鏡、ソーラシステムは射程がソーラレイほどではないのが救いか、それに焦点しか焼けないし、展開に時間もかかるしな。
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