第九話
寒い夜です。そんな中で、私もとい水谷響は宙を舞っています。
というのは少し語弊があるか。より正確に言うならば、どこぞの金ぴか王の片腕に乗せられて空中を移動してます。
我がサーヴァント、アンデルセンはもう片方の腕で小脇に抱えられています。
何故かは知りません。というかあなた、お昼に遊んだばかりじゃないですか。
「寒い。寒いです王様あと眠い」
「んん?そうか、生身の人間は特に寒さには弱いのであったな。少し待て」
とん、とどこかの家の屋根に降り立ち、私とアンデルセンを置いたかとおもえば金色の波に手をつっこむ。
そこから取り出されたもふもふの毛皮で作られているらしいマントを体にぐるぐるっと巻き付けられた。
「あったかぁい」
「王の財宝がひとつであるのだから当然だ。くるまっていれば魔力回復もする優れものであるぞ。とくとその身で味わうがよい」
「ふわぁい」
今まで感じたこともない居心地のよさに、つい寒さで冴えていた瞼が落ちかける。それくらいぬくぬくなのである。幸せ。
アンデルセンもギルガメッシュに悪態づきながら同じく毛皮を要求していたりする。何だかんだギルガメッシュも彼のことを貶しつつ渡しているのだから、男の友情?というのはよくわかりません。いえ、この二人に友情があるとは思っているわけではありませんが。
「ギルガメッシュ……どこに、行ってるの?」
「セイバーの陣営の本拠地よ。貴様の家を出た後にライダーめと出会せてな。王の格を問うなどと不遜極まりない宴を開こうなどと宣う故に、この我が王とはなんたるかを証すのだ。貴様らを連れていくのは、何だ。……うむ、余興である」
「……何それ……。良い子は、もう寝る時間なんだよ……。寝ちゃうよ……? いいの……?」
「すでに眠りかけているではないかたわけ! せめてこの我の格を焼き付けてから堕ちるがよい!」
そうは言われても、健康的な生活を送っている子供には、夜更かしは難しいですよ。
……まず今何時かわからないんだけどね。あ、アンデルセンは姿を消しやがったひどい、マスターを見捨てるなんて。
あれ、でも霊体化しても渡されたマントは一緒に消えるんだ。へぇ。
「ぅむ……ギル、ガメ……うるさぃ……眠い……」
「くっ、今寝るでない! 響!」
再び抱えあげられてわざとらしくゆっさゆっさと揺られながら空の旅。
私は何でこの人に気に入られたのやら。もうほんとに寝させてくださいよぅ。
ちょっとだけ気持ち悪くなりながらも、目を閉じているとその動きが止まった。
うっすらと目を開くと、お城のような建物の屋根に立っていました。記憶が正しければアインツベルンのお城のはずです。
何かを言おうかと口を開くより先に、すとん、と落ちていく重力を感じる。
「……ぅ……」
先程よりも強い浮遊感に、エレベーターが到着した時みたいな気持ち悪い酔った感じになって呻いてしまう。
視線を感じた気がするが、その気持ち悪さを堪えるために気のせいとして目を閉じる。
ああ~世界がぐるんぐるんしてる気がする~。一気に気持ち悪さが押し寄せてきたぞ……少しは加減してよ英雄王。
「ええと、それでアーチャー? その腕の娘は、一体どういうことだ? まさか、拐かしたというわけではあるまいな」
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