一話
○月×日
山で変な生き物を拾った。
休日、人気の少ない山で体力作りのトレーニングをしていると、獣の呻き声のような音を聞いた。
声のした方向を向くと、小型犬サイズの影がうつ伏せに倒れている姿を見て、最初は怪我をした子犬だと思って近づいたのだが、よく見ればそんな事はなく、種類すらも分からないモンスターだった。
影だと思っていたのは実は体色で、真っ黒なボディにオレンジ色に発光する模様をした、四足歩行のモンスター。
こちらが近づいてもピクリとも動かないので死んでいるのかと思ったが、傷らしい傷はないので生きてはいるらしかった。見捨てるのもあれなので、とりあえず持ち帰ってメシでも与えてやる事にした。
うちに持ち帰ったところ、母から「面倒は全部アンタが見な。責任はアタシ等が持つ」という何とも漢前な言葉を貰い、うちで飼う許可を得た。実は健康になったら適当に野に放すつもりだったのだが、これはつまり弱肉強食の世界で本来死んでいる筈の野生動物を助けるのだから、最後まで責任を持てという事だろう。ちょっと中学一年生に厳しすぎやしませんか?
ちなみにこの明らかに非常識なモンスターの外見については、「そういうもんだろ」の一言で片づけられた。相変わらずうちの母は器がデカいな。ちなみに父は帰って来て早々に腰を抜かしていた。
○月△日
このモンスターは随分な偏食家らしい。昨日は帰って早々に肉や魚を与えたのだが、一瞥しただけで、以降は何の反応も見せなかった。見た目にそぐわず草食動物なのかと思って野菜類も色々と与えてみたのだが、こちらも反応は無し。結局は何も食わずにその日を終えてしまった。
今日は朝から何ならば食うのだろうとか悩んでいたのだが、モンスターがジッと何かを見つめているのに気付いた。その視線の先にあったのは、以前父が母に無断で買ってきた、大昔の人が使っていたという剣の欠片だった。その時はこんなガラクタを大枚をはたいて買ったことで、母の怒りも買ってしまうことになったが、割愛しておこう。
試しにその欠片を与えてみた所、モンスターは嬉しそうに欠片を食べ始めた。どうやらこのモンスターの主食は鉱物だったらしい。ますますこのモンスターが何の生き物なのか気になる所ではあるが、中学生の頭で考えた所で答えは出ないだろう。
その後庭にあった石や、鉄、ステンレスなどの思いつく限りの金属類を与えてみたのだが、まったく反応しなかった。曰く付きの物品しか口にしないとは、こやつ、中々グルメである。
その夜、欠片がモンスターの餌となっている事に気付いた父が泣き崩れるのだが、慰めるのが非常に大変だったことを明記しておく。
○月□日
流行りの音楽番組を視聴中、普段は部屋の隅でジッとしているクロスケ(いつまでもモンスター呼びはどうかと思ったので、適当に名付けた)が珍しく動き、テレビの前に座り込んで動かなくなった。様子から察するに、どうやら音楽を聴いているらしかったのだが、理解できているのだろうか?クロスケには割と知能があるのかもしれない。
試しに今ハマっているアニメの歌を歌ってみたのだが、今度は音楽番組そっちのけで俺の歌を聞き始めた。プロの歌より俺の歌を選んだことに少し嬉しくなり、調子に乗って大声で熱唱していたら、近所迷惑だと鬼となった母に
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