ハーメルン
虹に導きを
―――黙って救われろ

 戦闘の始まりの流れは完全にオリヴィエが掴んだ。

 戦闘が始まるのと同時に、クラウスとヴィルフリッドは前に出ようとした状態で()()()()()()()()し、一瞬だけ体を完全に動かせなくなる。それと同時に聖剣を構えたオリヴィエがそれを振り抜いた。蒼空を思わせる刀身から放たれた光の斬撃は一瞬で二人の姿を飲み込み、大地に亀裂を穿つ。だがそれが到達するよりも早くヴィルフリッドが抜け出し、広く広がった光の刃を拳で破壊し、消滅させた。そこを食い破ったクラウスが一気に前に出て、振り抜いた姿のオリヴィエに接敵する。

 だがその動きは最後の一歩を踏もうとしたところで完全に停止した。

「これ、は―――」

 虹色の障壁だった。

 それも掌サイズの板に形成された。

 オリヴィエが行ったのは簡単だった。聖王の鎧、それを掌サイズまで小さくし、なるべく見えない様に処理しながら、動き始める体に合わせてそれを設置しただけだった。踏み込むときは、膝の前と足首の前に設置すれば動き出しの速度を完全に相殺して動きが停止する。攻撃に合わせて肘の内側と肩に出現させれば、それだけで攻撃動作が停止する。

 最強の防御力とは攻撃を防ぐことにあるのではなく、攻撃すらさせないという点で発生している。オリヴィエの聖王の鎧の使い方は対処法を編み出さない限りは一方的に相手を蹂躙するような、そういう類の技術だった。道場や遊戯、習い事で覚える様な技術ではない。優雅さが欠片も存在しない、戦場での敵の殺し方の類の技術だった。それは日々の中でヴィルフリッドから学習した使い方であり、同時に、柔軟な発想はこっちから学習したものであるというのも理解できた。

 おそらくは、本来の歴史よりも一段と強くなっている。彼女の環境がそうやって強くなることを許した。

 故に動きが停止したクラウスにオリヴィエの一切容赦のない凶刃が迫る。オリヴィエは止まるつもりがなかった。最早止められなかった。彼女は真面目すぎた。自分で選んだ道を捨てられないほどに。故に一瞬でクラウスが敗北してくれるように祈りながら光を込めてクラウスへと刃を振り下ろし―――それがヴィルフリッドへと阻まれた。

「おっとぉ、これは僕がいなかったら速攻で終わってたかもね」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/10

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析