めでたしめでたし
―――歴史が崩壊して1年が経過した。
自分は、生き延びた。
己というアイデンティティを持って。五体満足で。特に消える事も困るようなこともなく、普通に生き延びてしまった。格好つけたはずなのになぁ、なんてことを考えながらそう、1年も経過してしまった。新歴史、或いは新世界、新時代。そうとも言える場所へと漂流、とでも表現すべきか。そんな場所へと自分は到着した。本来であれば絶対にありえない現象だったが、それは成立してしまった。つまり、生きているのであれば生き続けなければならない。
生の命題である。
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大空を青い大鳳が飛翔する。それはやがて高台に居る此方の姿を捉えるとゆっくりと速度を落としながら、突き出した此方の腕の上に乗っかってくる。両足をしっかりと腕に固定した大鳳は小さく首を振るいながら翼を畳む。そして軽く頭を振ってから此方へと視線を向けてくる。
「―――いやぁ、全然ダメっすよ旦那。ちょいと三千世界を渡って参りやしたけどね、どこもどうも文明の形跡はあっても、それが超高度魔法文明まで至っている所はありやしませんねー。次元航行を行える文明はどこも途絶してやすねぇ」
次元世界を見て回ることが出来る召喚獣の首を軽く撫でながら、良くやった、とその苦労をねぎらう。もはやこうやって召喚獣に任せて次元世界を見て回らせるのも1年が過ぎ去った。漂着した世界は魔法の概念はあっても、存在自体が認知されない世界であった。魔法のない科学文明を構築した世界―――そこに漂着した。
「旦那、悪いっすけど正直これ以上表層部分を探っても何か見つかるとは思えませんぜ。オイラが見て回っている限り、魔法文明は存在しても次元の移動などに関してはほぼロストテクノロジーみたいな領域に突っ込んでいる感じっすよ。少なくともこの次元前後の数百内はそんな感じっすな。もし残ってたとしたら相当秘匿されているっすよ」
成程、と呟き召喚を解除した。時を超え、歴史を超えて多くの召喚獣が歴史の流れと共に消え去ったが、遥か古代、古代ベルカよりも前から存在していたり、歴史が変わったところで影響を受けないような連中ばかりは契約を残したままであった。つまり、今の大鳳もそういう召喚獣の一体であった。単独で次元移動可能で、ステルスや索敵能力が高く、偵察には便利な奴であった。そしてそれによる1年間の調査が終わった。
高度魔法文明は滅んでいた。
否、言葉を変えよう。
時空管理局は生まれなかった。
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