ハーメルン
虹に導きを
彼女は穢れて人と初めて誰かと並べた


「やぁ、憶測出来るだけの情報が増えたから君と私で情報整理をしようかな、って。と、そうそう。ディエチ、私にもカレーをよろしく。無論、甘口でね」

「ドクター、辛いもん苦手ですもんね」

「刺激は悪くないけどあの辛さに負けて脳みそから考えてたことが飛んでいきそうでね、どうも辛い物は好きになれないんだよ」

 それはもったいないとしか言えない。辛いものはそれはそれで美味しいというものだ。確かに度が過ぎると辛いを通り越して痛いし、それはそれで料理で遊んでないか馬鹿としか言えなくなってくるが、適度な辛さは味覚を刺激するから旨みとして感じられるのだ。そう、辛さがそのままダイレクトに美味しさとしてつながる料理というものはある。それを知らないのは余りに哀れだ。そう、ジェイルは哀れなのだ。

「同情的な視線を向けられ始めてるからそろそろ話題を変えようか? といっても当然ながら今回のダイブに関する事なんだけどね」

 ホロウィンドウを広げながら甘口カレーをジェイルが受け取り、スプーンを片手に握りつつ、ジェイルはホロウィンドウ内の情報の整理を行い始める。そこにはモニターを通して観測していた此方の事や、オリヴィエの事が記載されている。

「さて……まず最初から話を通すなら私達は……いや、君は私の先導で遺伝子を通した過去の記録へのハッキングを行った。これをサイコハックと呼ぼうか。私の目的はこの技術の完成、そして聖王という人物の本当の歴史を知る事だった、一つの興味としてね。その相方として呼び寄せたのが君で、この技術は私の科学技術、この施設の機材、遺伝子ベースとなる聖王のクローン、そして君が持つ超越された召喚とジャンクション(憑依付与)能力を合体させた共同作業であった……ここまではいいかな?」

 カレーの乗っていた皿を空にして、デザートのプリンをもらいながら頷く。

「では普通にダイブに成功した君は古代ベルカ時代の王族の様子を見る事に成功した。予想していたよりもはるかに幼い時代にダイブしてしまったのは誤算だったけど、おかげで幼い時代の聖王オリヴィエの姿が見れて悪くはない結果だったね。ただし、ここでイレギュラーが発生した。本当は過去の映像を眺めているような筈の技術である筈が、向こう側とコンタクトを疑似的に取れている事が発覚した。オリヴィエもどうやら君の声に反応する事は出来た様子だ。となると何かがおかしい」

 そう、とジェイルが言う。

「私の技術がおかしいのか? 機材が悪いのか? 彼女の遺伝子が悪かったのか? それとも君が間違えたのか? それとも見えない何かからの干渉があったのか? 疑問は尽きないけど私としては一つの仮説に至ってね」

 それは、とジェイルに問いかけた。それを受けてジェイルはにやり、と笑みを浮かべた。

()()()()()()()()んだよ。最高の技術と機材とクローンと術者。この次元世界で集められる最高の状態だ。それで本気を出して挑んだんだ。おそらくはサイコハックの領域を超えて、疑似的に時間軸への干渉が出来る領域に突入してしまったんだね。タイムリープというよりはタイムハック。時間軸への限定介入による改善という形が近いかもしれないね」

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