ハーメルン
ドラゴンクエストⅪ 復讐を誓った勇者
第10話 さらばデルカダール

デルカダール神殿を出た2人は草むらに隠した馬に乗り、東にある旅立ちの祠へ向かっていた。
デルカダール神殿までの街道については、国によって整備されているものの、旅立ちの祠への道はなく、無造作に育った草やツタを切り分けながら、徐々に前へ進まざるを得なかった。
「本当にこの先に旅立ちの祠があるのか?もう2時間このジャングルにいるぜ?」
クタクタになり、イシの大滝で補給した水を口にする。
エルバも水を口にすることはあるが、疲れた様子を見せずに道をふさぐツタを斬っていく。
まだ昼であるにもかかわらず、木々によって空が隠されてしまっており、夕方のような暗さになっている。
このまま本当に夕方になると、ランタンなしでは進めなくなり、最悪の場合、ここで野宿をする羽目になる。
カミュはこういうテントを設置できないような場所で野宿をしたことが何度かあるため、どれだけ大変であり、体力を回復できないかをよく知っている。
「ま…ここから戻ったとしても、そろそろグレイグあたりが気づいていそうだけどな」
残念ながら、2人には進むのをやめ、前にキャンプをしたデルカダール神殿北部の広場へ戻るという選択肢がなかった。
神殿の前にある兵士が休憩するためのテントの中で、兵士の交代のスケジュールを見つけていた。
そこでは、2,3日に1度、警備する兵士を交代することになっており、それが正しければ、今日の夜当たりには交代の兵士たちがやってくる。
そこであの惨状を見て、さらにのこのこと戻ってきた自分たちを見られたら、関与が疑われるのは明白だ。
おまけに、カミュの手にはそこで守られていたレッドオーブがあり、言い逃れができない。
兵士たちに追い掛け回され、再びあの地下牢に送られる、もしくは即座に処刑されるのが関の山だ。
2人にある選択肢はテオの言葉を信じて、ひたすら東へ進むだけだ。
「く…!」
何度も兵士の剣でツタを切り続けたエルバの表情がゆがみ、剣が落ちる。
どうしたのかと思い、駆け寄ったカミュは彼の右手を見る。
手のひらにできたと思われる、大きな豆がいくらかつぶれてしまっていて、そこから出血しており、半分以上が真っ赤に染まっている。
「あちゃー、休まずにやると、そうなるよなぁ」
「この程度なら、まだ少しは…」
「まあ待てよ。このジャングルを抜けたとしても、すぐに祠に到着できるとは限らねえんだぞ。治療してやる」
「治療なら、ホイミで…」
「あんまり呪文に頼りすぎるなよ。MPだって、無限じゃあないんだからな」
強引にエルバに腕をつかんだカミュは水筒の残った水を使って、エルバの右手を洗った後で、めくれている皮を切り落とす。
そして、布を使ってその手をテーピングした。
本当は毒消し草の抽出液を塗って、手の保温ケアをするとより効果的なのだが、いまの2人にはそのようなものはない。
どうせ休めといったところで、彼が止まるわけがないことはわかっているため、せめての応急措置だ。
テーピングを終え、エルバは右手を握り、もう1度開く。
わずかに痛みを感じるが、先ほどよりはましで、切って進むのに関しては問題ない。
落とした兵士の剣を拾ったエルバは再びツタを切り始めた。
「ったく、礼ぐらい言えよ」
そのことだけを不満に思いながら、カミュは後ろからついてくるフランベルグら馬の誘導をした。

「はあ、はあ…見えてきたぜ…」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/6

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析