ハーメルン
ドラゴンクエストⅪ 復讐を誓った勇者
第19話 ファーリス出陣

「しっかし、エルバもだんまりになったくせに妙にお人よしだよなー。こんなアホな依頼を受けるなんてよ」
宿屋で合流し、4人で城へ向かう中、雑踏によって聞こえている人がいないことをいいことにカミュが愚痴をこぼす。
やろうと思えば、段取りに時間がかかるとはいえ、レッドオーブを盗んだ時のように城へ忍び込んで盗むこともできた。
デルカダールよりも小規模な城であるため、カミュにとって侵入は簡単だ。
「国宝だからな、それに大事にしたくない」
「だ、ろうな…。ま、その国宝を持ち歩いている俺があれやこれやいう資格はねーけどな」
「あの、カミュ様。なぜそのレッドオーブがほしかったのですか?」
2人の会話を聞いていたセーニャが小さく右手を上げ、カミュに質問する。
レッドオーブについてはホムラの里を出発した日の夜のキャンプで話していたが、その理由については一向に応えなかった。
そのことがセーニャにとって大きな疑問の1つとなっていた。
「ま、何か使い道があるだろうって思っただけだ。別に大した理由じゃねえよ」
「でしたら、お返しするか、路銀に変えたほうが…」
「そろそろ城につく。その話は終わりだ」
サミットの理事国の1つであるサマディーにも、おそらくレッドオーブが盗まれたという話は届いていて、仮にうっかりその話が聞かれてしまったら、脱獄囚としてデルカダールまで連行されてしまう可能性がある。
レッドオーブに関する話題を半ば強引に打ち切り、表門から城に入ろうとした。
「待て、エルディ殿でよろしいか?」
「そうだが…?」
門番に引き留められ、名前を聞かれたエルバはうなずいて答える。
自分の偽名を知っているということは、おそらくはファーリスから話を聞いていると予想できる。
もしかして、そのことがばれたのかと思いつつ、門番の話に耳を傾ける。
「実は…ファーリス王子から伝言を預かっております。自室に来てほしい、とのことです」
「部屋に…?」
「はい。どういうわけか、強敵と出会ったスライムのようにプルプルと震えておりました。何があったのでしょう…?王子の部屋は陛下の間への階段の右側です」
「ああ、感謝する」
門番に礼を言うと、エルバ達は城の中へ入っていった。
「なんだか…すっごく嫌な予感がするんだけど」
「ベロニカ、てめーもか。実は俺も」
2人の会話がセーニャの耳に入るが、どういう意味か分からず、首をかしげながら頬に右手人差し指を当てていた。

ノックをし、入ってきたエルバ達がドアを閉めた瞬間、目の前でファーリスが土下座をした。
一国の皇太子であるファーリスの恥も外見も気にせぬその姿には何かすがすがしいものがあった。
「頼む!一生のお願いだ!!魔物を倒すのに力を貸してくれ!!!」
土下座と共に飛び出した一生のお願いを聞いたカミュとベロニカは頭を抱え、ため息をつく。
あとは彼の口添えで虹色の枝をもらう、もしくは借り受けたらさっさとサマディーを離れようと思っていた矢先に、今最も頼みごとを聞きたくない相手から頼みを聞くことになった自分たちの境遇を不運と思うしかなかった。
「…話が見えないが。虹色の枝はどうした?」
「じ…実は、そのことについて話そうとしたんだけど…」
ファーリスは額を絨毯につけたまま、城に戻った後のことを話し始める。

「ファーリスよ、見事な走りだった。さすがは私の息子だ」

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