ハーメルン
オーバーウォーズ
6. 機械都市

 システムの管理をおこなっている、人型であるが培養皮膚は全くついていないロボット。
 セラミックスと複合素材で構成された無機質で純然たる機能一点張りな外観である。右肩にサミエルと書かれている以外は。

 そのロボットはモニターが目まぐるしく写している信号をチェックしながら機器を調整していた。システムのログアウトを確認後、警報ベルが室内に響き渡る。
 動いていた機械は役割を終えておとなしくなる一方で、眠っていた機器が次々と目を覚ます。

 真新しい設備、気が遠くなるほどの高額の機材がびっしりと空間を埋め、足の踏み場に難儀するほど。デットスペースなど存在せず隙間という隙間に装置が置かれている。その部屋は比喩無しの電子の要塞である。至る所に計器類や制御盤、モニターが光を放っている。



 やがて調整を終えたロボットがベッドに横になっている1人の女性に視線を移す。

 人間が眠れるベッドではない。華麗な装飾はなく、わずかなクッションを除き金属でできており、すぐ横にはケーブルをつなぐ端子がいくつも露出している。人間では筋肉痛は確実で寝返りすらうてないだろう。

 女性の周辺にはケーブルが彼女を守るかのように散在していた。そのうちいくつかは彼女や身に着けている鎧に直接つながっている。

 ロボットが見守る中、ケーブルから信号が届き、鎧を身に着けた女性が眠りから覚める。



 ----- ダイブから復帰 ----- 各システム確認 ------



 彼女の瞳には目まぐるしく体の状態をチェックするシーケンスがはしっている様が映し出されている。

 ベットから半身を起こし腕を動かすが、ガントレットで覆われている腕を動かす様は着込んでいるにしては動きが自然すぎる。生身の腕のように動かしている。
 やがて脚を動かし始めるが、脚は鎧に覆われておらずシミ一つない白い肌が鎧のスリット越しに見える。上半身の重装備にしては無防備のように思えるが今の姿勢だとそう見えるだけだろう。鎧はスカート状になっている。

 動作確認を終えた彼女は、ダイブ中自分の面倒を見ていた存在に目を向ける。

「ふむ、全システム問題なし。立ち上がっていいぞシェラ君」

 無機質な外観に似合わず流暢な言葉で話すロボット。
 シェラと呼ばれた女性は合図とともに体につながっていたケーブルを手で抜く。


 ----- 各システム正常 ----- 動作に支障なし -----


 シーケンスが終了したことを確認し立ち上がる。
 姿勢が変わることで紫色の長い髪が緩やかに肩にかかる。端正な顔立ちだが人間にしては瞳に感情がこもっていない。





 金属の匂いの中に僅かに人間の匂いを漂わせる女性。そこにはユグドラシルにいたのと同じ魔導鎧をまとった少女がいた・・・否よく見ると鎧の造形がやや異なる。魔導鎧というファンタジー色は薄くSFで見かける装甲のような印象を受ける。





 ひさしぶりだといわんばかりに大きく一呼吸する。宙に浮遊し、その様子を観察していた別のロボットが告げる。

「シェラ・エルサリス様、スカイネット様がお待ちです。基地へご案内いたします」

 言葉を切り先導する。そのロボットはドローンの様な見た目をしていた。

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