ハーメルン
オーバーウォーズ
8. 機械を統べるもの

「シェラ君、スパルタン計画を知っているか?」
「記憶領域検索 --- 該当情報有。UNSC(国連宇宙軍)が主導する強化超人計画のことですね」
「そうだ。キャサリン・ハルゼイ博士を中核として身体的、遺伝的、技術的に優れた兵士を人工的に作り出そうとしている」
「鎮圧用にはオーバースペックすぎますが」
「今となっては反乱軍より奴らに対抗する手段としての側面が強い。構想段階では想定していなかったがな」
「スパルタン計画に何かあったのですか? 」
「計画そのものに問題はない。だが計画というのは複数用意するものだ。例外はない」
「複数の案を互いに競わせるやり方は、一般的に競争試作と言われています」
「うむ、その中の一つにデルタ社が関わっている。ハルゼイ案が採用された事で凍結されたはずだが、彼らは自費で継続しているとの情報があった」
「そこでユグドラシルですか・・・」
「VRを用いた方法は彼らが提唱した。単に損失を回収しようとしているだけかもしれんが、念のため伝えておこうと思ってな」


「データベース照合 --- 強化ではありません。これは!! 」
「言わなくてもいい。ハルゼイはあれでも人道的だったのだ」
「了解。デルタ社への警戒レベルを上げます」






「シェラ様、まもなく到着いたします」

 車載コンピュータの声で現実に連れ戻される。電子の光が支配する戦闘指揮車の車内。いつの間にやら寝落ちしてしまった。以前の記憶が夢としてフラッシュバックしたらしい。
 診断プログラムを走らせると生体部品が大分疲労している。
 この体は完全な機械ではない。外見はあたかもアーマーを纏った少女であるが人間は生体部品にすぎない。体をコントロールする中枢回路はアーマーに組み込まれており、よくアンドロイドと勘違いされるが自分は自立行動するパワードスーツに近い。
 
 ユグドラシルでも現実に似通った設定で見た目はほぼ一緒だが、世界観に合わせてファンタジー色を押し出している。「嘘を信じさせるにはある程度真実を混ぜる必要がある」とサミエル博士に言われるがままであったが。今から思えばそのままで良かった気がする。


「生命反応低下を観測したため興奮剤を投与しました。沈静化するまでしばらくお待ちください」


 ドアウインドウに反射して写っている自分の顔を改めて見る。たしか実験で酷使させ死亡させた被験体の少女だったはずだ。紫色の髪は実験による副産物と聞かされている。
 元々整った顔立ちだが更に整形・・・本来は乱雑な手術跡と薬物反応で変色した皮膚の跡を消す程度のはずだったが・・・担当したロボットが何を思ったのか「製品は美しくなければならない」といい手を加えてしまった。おかげで人間の生活圏にいくと否が応でも目立つ。男はよってくるし、少し・・・困る・・・








コロラド スカイネット本拠地


 都市から離れ車両が走っている。道の周りにはただ荒野が広がっている。

 永遠に続くと思われた一直線の道であったが、しばらくすると物々しく巨大なゲートが現れ車両はその前で停車する。至る所にオートタレットが備え付けられ、地上には戦車のような戦闘ロボットが、空にはハンターキラーエリアルと呼ばれる戦闘ロボット達がゲートを護っている。機械的な動作で全ての銃口が車両へとむけられる。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析