第5話 謎の集団
村長の家に招かれたモモンガとウルベルトは、そこで今回の報酬であるこの世界の情報を受け取っていた。最初はまるで生贄となる子羊のような恐怖と懇願の表情を浮かべていた村長も、モモンガやウルベルトと話すにつれて落ち着いてきたようだった。
因みにここにいないペロロンチーノはエンリとネムに付き添って村の作業を手伝っている。最初は村人たちに恐怖から全力で断られていたのだが、彼の人好きするような雰囲気と姉妹の口添えもあり、何だかんだで今では大分受け入れられているようだ。目の前の村長や姉妹にも言えることだが、この村の人間は随分と柔軟な精神を持つ者が多いらしい。いや、同じ人間に襲われて異形に助けられたというのもあるのかもしれないが、どちらにしろモモンガたちにとっては実に都合の良いことだった。
モモンガはテーブルを挟んで村長の前に座り、ウルベルトは棚に飾られている物を眺めながら立ったまま村長の話に耳を傾けている。できるだけ冷静に話を聞くよう努めてはいたが、村長が話す内容は全てが聞いたことがないものばかりでモモンガたちを困惑と驚愕の海に沈ませるものだった。
まず初めに聞いたのは周辺国家について。
ここはカルネ村と言う村で、リ・エスティーゼ王国に属する辺境の村であるらしい。近くには王国に属する他の村と、エ・ランテルという城塞都市が存在する。
隣接する国としては、山脈を挟んで東にバハルス帝国という国があり、南にスレイン法国という宗教国家がある。更に三国の周辺には多くの国があるらしいが、残念なことに村長は詳しいことは何も知らないとのことだった。
国同士の関係としてはリ・エスティーゼ王国とスレイン法国は交流自体が少なく、逆にバハルス帝国とは仲が悪い。城塞都市の近くにある平野で年に一度は戦争をしているらしい。今回村を襲ってきた騎士たちもバハルス帝国の紋章が刻まれた鎧を身に着けていたため恐らく戦争の影響でバハルス帝国の騎士が攻めてきたのだろうと村長は言っていたが、モモンガとウルベルトは納得しかねる表情を浮かべていた。
『どう思いますか、ウルベルトさん?』
『確率は2:1ってところだな。戦争中ならバハルス帝国の差し金の確率の方が高いが、スレイン法国も気になる。別に仲がいいって訳じゃないみたいだしな…』
『ですよね…。自分の素性が分かる鎧をわざわざ着て襲撃してくるのも違和感がありますし、法国からの欺瞞工作とも考えられます』
『……シャドウデーモンたちに全員殺させたのはマズかったか』
村長に気づかれないように〈伝言〉で会話しながら、ウルベルトが小さくため息をこぼす。
しかし過ぎたことを悔やんでいても仕方がない。今は少しでも情報を入手しようと村長の話に集中することにした。
周辺国家の次は、使われている硬貨や周辺に生息するモンスターについて。
端的に言ってしまえば硬貨はユグドラシルの硬貨とも現実世界の硬貨とも違い見たことがないもので、逆にモンスターはユグドラシルに生息していたものと同じようだった。
硬貨は銅貨、銀貨、金貨の三種類があり、どうやら紙幣はないようだ。
モンスターは魔獣の他に子鬼や豚鬼などの亜人もおり、世界のどこかには亜人の国家も存在するらしい。しかし魔獣や亜人、異形種はこの世界でも人間にとっては敵であるようだった。人間の世界には冒険者組合と呼ばれるギルドが存在し、冒険者たちは報酬次第ではモンスターたちを狩っているのだとか。
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