第13話 初めての商談・実践編
エ・ランテルで見た中では最も立派な館と言うのが取りあえずの感想だった。
予定通りモモンの威光で問題なく検問所を抜けたアインズはセバス、そしてパンドラズ・アクターとナーベラルを伴ってこの館まで移動した。
門前にいた者に来訪を告げると直ぐに館の入り口まで案内される。玄関の前に立っていた執事らしき老年の男が恭しくお辞儀をし扉を開けた。
開かれた扉の奥から見覚えのある顔が現れ、アインズは気を引き締め直す。
「ようこそお出で下さいました。私が当家の主人、バルド・ロフーレです」
先に挨拶をされてしまったが、ここは直ぐにアインズから何か言うべきなのだろうか、と思っていたところ、パンドラズ・アクターがすっと前に出てバルドに声をかける。
「この度はお誘いいただき感謝します。ロフーレ殿」
「おお、モモン殿。以前は時間が取れませんでしたからな。お招きすることが出来て良かった。それで……」
にこにこと嬉しそうに──それが本心であるかは別にして──笑って言うバルドがチラリとアインズの方を見る。
異様と言っていい嫉妬マスクを見ても驚きを見せないのは流石と言ったところか。
今度こそアインズが声をかけるべきか。と一歩足を前に出しかけたところで、再度パンドラズ・アクターがバサリと大仰な仕草でマントを翻しながら後ろ、つまりはアインズの方を振り返った。
「ご紹介しましょう。私が昔からお世話になっている恩人、アインズ・ウール・ゴウン様です」
その大げさな動きは止めろと言いたいところだが今は仕方ない。
パンドラズ・アクターの導きにより、アインズはやっと足を進めバルドの前に立つことが出来た。
「初めましてロフーレ殿、私がシグマ商会、いや王国では名を変える事になりました。新たな店、魔導王の宝石箱の主、アインズ・ウール・ゴウン。この度はお招き感謝します」
口調は丁寧だが頭を深く下げることはせず会釈程度に留める。尊大な態度だがこれも会議の中で決定したアインズのキャラ付けの一つである。
礼儀を重んじることも必要だが、下手に出すぎては舐められる。そもそもアインズは永い時を魔法の研究に費やした魔法詠唱者という設定だ。
多少礼儀知らずの方がリアリティがあるだろう。
とのことなのだが、アインズとしては初対面のそれもこれから仕事の付き合いが出来るかも知れない相手にこんな態度を取るのは胃が痛くなる思いだった。
気にしないでくれると助かるのだが。
「初めまして、ゴウン殿とお呼びすればよろしいですかな?」
「それで結構です。ロフーレ殿、それとセバス」
「はっ」
セバスがすっと音もなく前に出てくる。
バルドの瞳に安堵の色が見えた気がした。
「セバスとは顔見知りと伺っています。紹介の必要はありませんね?」
「おお。もちろんですとも。久しぶりだねえセバスさん。その様子だと王都には無事に着いたようだ。心配していたんだよ」
「あの時は折角の御配慮を無碍にしてしまい、申し訳ございません。私もそして現在は王都に残っておいでですが、ソリュシャン様も無事王都に到着出来ました」
「いいんだよ。セバスさんが無事なら。それとナーベさんもよくぞいらっしゃいました。本日は楽しんでいって下さい」
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