第18話 これからについて
セバスとシャルティアが部屋を後にし残されたのはアインズと、ことの成り行きを見守っていたこの店でのアインズのメイド兼従業員のツアレのみ。
一息入れたいところだが、ツアレが居たのではそれも出来ない。
「──ツアレよ」
「は、はい!」
そんなに緊張しなくても、と思うがどうもツアレの立場は色々と複雑らしいので無理もない。
ユリに聞いたところ、一般メイドたちはツアレのことをあまり快く思ってはおらず自分達の仕事を奪いにきた部外者と思っているらしい。
そもそも一般メイド達はアインズがこの店で働くのならば自分たちが供回りとして着いていくのが当然と考えていたようで、ツアレをその地位に就けたことに大変ショックを受けたようだった。
そのせいで余計に彼女の立場は難しくなった。
しかしナザリックこそ至高と言う考え方が基本の一般メイド達ではやはり商売には向かないし、なによりも危険だ。
人間と大差ない力しか持たないホムンクルスである彼女たちでは何かあったとき対応が出来ない、常にアインズやセバスが居るわけではないのだから。
そういう意味では元娼婦の者達は最悪何か起こって死んでしまっても問題ない存在──ツアレだけは一応セバスの恋人候補であり、妹の恩もあるので多少は目をかけるつもりだが──なのだ。
「間もなく開店となるが他の者達の教育は済んでいるのか?」
実のところその話はすでにセバスからどうにか及第点まで達することが出来た。という報告を聞いていたのだが、他に話題が思いつかなかった。
「は、はい。セバス様を始め、ペストーニャ様、ユリ様、エクレア様、皆様に仕事を教えていただき準備は完了しております」
確かに、やや口調が堅く緊張しているようだったが先ほどのガゼフへの対応に問題は見えなかった。
尤もアインズは何となくスムーズに動けているな。程度にしか判断出来ないので、果たして先ほどの動きがメイドとして完璧なものなのかは分からないのだが。
「ならば良い。お前には皆のまとめ役として働いてもらうことになる。問題があった際は直ぐにセバスか私に報告せよ」
「はい! 私たちは皆アインズ様に命を救っていただいた身。決して裏切るような真似は致しません」
妙に力強い言葉はどうもアインズに訴えかけているようにも聞こえる。
つまりはアインズが自分たちの裏切りを懸念している。と誤解したのだろう。
そのあたりも全てセバスに任せているので問題はないだろうが、緊張感を持たせるためにあえて否定も肯定もせずにアインズは無言で頷いた。
話が終わり、沈黙が広がる。
別に無理に話す必要もないかと、アインズはツアレから視線を外し、ふと先ほどのセバスの様子を思い出す。
「セバスか」
「セバス様に何かございましたか?」
聞こえないような小声で言ったつもりだったが、沈黙によって静まり返っていた部屋の中には良く響いたらしくツアレが言う。
セバスのことになると反応せずには居られないのだろう。
そう言えば結局ツアレとセバスがその後どうなったのかも聞いていない。
そのあたりを聞いてみたい気持ちになるが、この緊張ぶりを見るとそうした世間話はまだ早いだろう。
(もう少し打ち解けてからにするか。とすると他に何か……まあ別に隠す必要もないか)
「いや、先ほどのセバスは奴にしては珍しく感情を表に出しているように思えたのでな」
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