その2
人から人へ、この剣はいつの時代も手渡されてきた。
異世界でも、この剣は人を守ってくれる。
東京タワーは戦車の鉄が使われている。
常識的に考えよう。
兵器の鉄を溶かして新しく作るのは、普通は兵器ではないだろうか?
東京タワーはその誕生経緯からして、兵器の申し子なのだ。
自衛隊に鍛えられ、東京タワーは真の姿たる剣の姿を取り戻した。
最大の有事には総理大臣が右手に剣たる東京タワーブレード、左手に槍たる東京スカイヤリーを持ち戦うことが、憲法にも定められている。
「うおおおおおおおおおおッ!!」
敬刀が、東京タワーブレードを叩きつける。
これは殺さずの剣。
刃を持たぬ剣。
全力で叩きつけたところで、人が死ぬことはない。
されどこの剣は、刃が付いていないという意味において、竹刀に等しい。
ゆえにか敬刀の手に馴染む。
剣と使い手の相性の良さが、奇跡を呼んだ。
「見ろ!」
「巨人の体から!」
「フィーアの寄生蟲が全部叩き出された!」
ポテチの袋を傾け、袋の底をポンポンと叩き、ポテチのカスを出すのと同じ原理だ。
叩いたことで、飛び出して来た。
叩き出せたなら、もう面倒なことは何もない。
数百万か数千万かも判別のつかない寄生虫の山を見て、スプーキーが青い顔で鞘に入った魔剣を掲げる。
魔剣の先が、朔陽の足元の虫を指した。
「サクヒ君、それが本体だ。潰したまえ」
「え? あ、はい!」
そして踏み潰す。
サクヒの足がぷちゅっと虫を潰したその直後、全ての寄生虫がビクンビクンとのたうち回り、やがて死んでいった。
どうやら本当に、今潰した虫が本体だったらしい。
全ての寄生虫が巨人体外に出るまでは、本体がどこに居るのかバレていなかったあたり、フィーアの作戦は間違っては居なかったのだろう。
だが、ただひとつ。
東京タワーブレードの存在を予想していなかったことが、最大にして唯一の敗因となった。
「朔陽」
「おつかれ、敬刀くん」
見方によっては、敬刀が虫を叩き出し、朔陽がそれを潰すという連携によって勝ったようにも見える形。
敬刀は、それがなんだか嬉しかった。
敬刀が東京タワーブレードを掲げる。
朔陽が聖剣を掲げる。
二つの剣の腹が、軽くぶつかり合う。
お遊びのような友情の確認。
幼稚な互いの気持ちの確認。
それでも、なんか嬉しくて。
朔陽と敬刀は、顔を見合わせ思わず吹き出し、それからずっと笑っていた。
何が楽しいのかも分からないのに、ずっと、ずっと。
友達の顔を見て、笑っていた。
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