日本全国から自分の限界に挑戦する不良達が集まる戦争。
後に、挑戦戦争と呼ばれるようになる最後の大戦争が始まったのさ」
「戦争扱いかー……戦争扱いかー」
「メリケンの残党が北挑戦区画に流入して、新宿や練馬区などを抑えた。
これに応じてソビエトも南挑戦区画の支援を開始した。
最終的にまた張飛くんが暴れて、東側と言われたソビエト側の不良勢力も叩き潰されて……」
「うん、もういい、もういいよ、よーくよーくわかったから」
歴史オタクの男子に興味のない歴史抗議を聞かされた女子のような顔を、和子はしている。
和子は張飛の人柄を聞きたかったのであって、歴史講義を聞きたかったわけではないのだ。
「この後の中国地方東部鳥取での、砂にまみれた中東イラク戦争にならないと僕出て来な……」
「もう私お腹いっぱいだから」
朔陽はまるで、英雄を語る語り部のようであった。
人は英雄の人柄を聞かれた時、歴史を語る。
英雄の人柄は歴史に記されているからだ。
そういう意味では、千ヶ崎張飛は既に『伝説の不良』と化していると言える。
……現代で伝説の不良という肩書きを持つ者が居るという時点で、驚かれて然るべきことだが。
「張飛くんは良いところも悪いところもある人だよ。僕は好きだけど」
「サクヒは友達皆好きじゃん」
「好きだから友達やってんだからそりゃそうでしょ」
良いところだけを見ているから友達というわけでもなく、悪いところがあるから友達を辞めるというわけでもなく。
「例えばほら、たつきさんの話は聞いてるよね?」
「うん、本人から」
「噂話を聞いて"女を弄ぶクズを殴る"って目的で張飛くんはたつきさん側に付いた。
これは間違いなく良い部分だよ。
でも誤解が解ける前に行動に出て、校舎を殴って消滅させた。これは悪い部分なんだ」
「……不良やっばい」
朔陽が和子にそれを語ったのが、大体一ヶ月前のことだっただろうか。
朔陽がそれを和子に語った一ヶ月後、屋敷のソファーでうとうとしていた朔陽を、和子が揺り起こした。
「サクヒ! サクヒ!」
「……んにゃ……あれ、もう登校時間?」
朔陽は寝起きで寝ぼけていた。
頭の中を意味のない言葉がぐるぐると回る。
アル中ってアルトリア顔中毒のことだっけ? アルコール中毒のことだっけ?
ジャンキーって麻薬好きのことだっけ? ジャンヌオルタ好きの邪ンキーのことだっけ?
ナポレオンは「私の辞書に不可能は無い」と言ったんだっけ? 「私の頭部にふか毛は無い」と言ったんだっけ?
ナポレオンの頭にふかふか毛はあったっけ……ハゲを帽子で隠してたんだっけ……?
そんな感じに寝ぼけていた。
「寝ぼけてないで! 事件事件!」
だが、和子の鬼気迫った声に、一瞬で意識を正常なものに戻していた。
「状況説明お願い」
「街中で、前に話してた千ヶ崎さんが暴れてる!」
[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/10
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク