ハーメルン
サーティ・プラスワン・アイスクリーム
出席番号24番、狼少女・子々津音々寧々の場合

 王都の命運を懸けた一打席勝負の後、ダッツハーゲン王国では空前絶後の野球ブームが始まっていた。
 「やっぱ今の時代は野球やな!」を合言葉に草野球が大流行。
 ボールが飛んで、バットが振られ、地は裂け、空は混ざる。
 自分の練習も兼ねて野球教室を始めた一球だが、おかげでこれもブームに乗った大当たりとなっていた。

 大人の騎士や騎士志望の子供達、ある程度生活に余裕のある農家の次男坊以下など、男性を中心に広まる野球ブームは留まることを知らなかった。
 一球が基本を仕込んだ者達をいくつかのチームに分け、聖騎士リーグのセ・リーグとパラディンリーグのパ・リーグの二つのトーナメントを開催しても、まだ人に余裕があるほどだ。
 おかげで侵略者のせいで低下した地球のイメージの回復、資金リソースの確保、コネの獲得などの様々なプラスを生むことに成功していたのである。

 それはそれとして。
 朔陽はこの国最強の騎士と言われる男、スプーキー・パンプキン卿に呼び出されていた。

「急に呼び出してすまないね」

「いえ、大丈夫です。
 この前の巨人の件で助けていただいたことのお礼もしたかったので、ちょうど良かったです。
 では改めて。この前の会議で僕らの意を通していただいて、ありがとうございました。
 これはこちらの世界で再現した引越しそばです。お礼も兼ねて、お収めください」

「ヒッコシ=ソバ……興味深い。今ここで食べても?」

「え? ど、どうぞ」

 引越しそばをもらったそばから食べる(激ウマギャグ)騎士の姿に、朔陽は思わず呆気に取られるが、うめえうめえと食っていくパンプキン卿は気にもしない。
 そばは初めて食べるはずなのに、食べる姿が妙にサマになっているのは、この騎士の育ちがいいからなのだろうか。
 言葉の発音も、一回か二回聴けばきっちり寄せて来る。

「この醤油とやらも引越しそばとセットで貰っていいのかい?」

「はい、どうぞ。
 厳密には地球の醤油やそばとは違うんですけどね。
 うちのクラスの料理が得意な子が、この世界の食材で再現したものなので」

「異世界を行き来する技術が確立されれば、日本とこの国で国交もするだろう。
 そうなった時、君達の世界からどんなものを得られるのか、とても楽しみだ」

「もうそこまで見据えているんですか?」

「そう考えてるのは私だけじゃないだろう。
 この国だけで地球との国交を独占しようと考えている貴族も居るんじゃないか?
 地球産の物品や技術をこの国が得た後、他の国に売れば凄まじい高値で売れるはずだ」

「うわぁ」

「勿論、この国だけでずっと独占するのも手ではあるがね。
 スパイや地球と他国との直接交渉で諸々流出するのは時間の問題だろう。
 ならこの国の貴族の基本方針は、そうだな……
 手早く大きな利益を得てから、地球への窓口としての立ち位置を確立することか」

 この騎士は何故か、朔陽達の味方になってくれている。
 その思考は単純な兵士としての騎士というより、貴族が義務を果たすためにノブレス・オブリージュを志すタイプの人間のそれに近い。
 確かな教養と、未来を見据える知性が見て取れる。

「私は未知との遭遇がいいことだけを引き起こさないと思っている。

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