出席番号24番、狼少女・子々津音々寧々の場合
そしてそれをよりよきものにするために、君と話してみたいと思っていたんだ」
「恐縮です」
「また時間を見つけて君と話したいと思っているが、その時は君も時間を作って欲しい」
朔陽が目的としているのはシンプルで、仲間達の地球への帰還だけだ。
が、帰還の後にも問題はある。
二つの世界の相互認識と交流は、二つの世界に莫大な利益をもたらすだろう。
だが世界間で貿易摩擦が起きれば?
この異世界の国家間にあったバランスがその貿易で崩れてしまえば?
そうなればどうなる?
この異世界の人類圏が地球のせいで戦乱に巻き込まれるだけならまだマシだ。
最悪、地球とこの世界の世界間戦争に発展しかねない。
魔王という脅威が目の前に居るのに人間は勝手に自滅していきました、が普通にありえるのである。
逆に地球からの援軍で魔王も倒せました、もありえる。
今のところ、これはどう転がるか分からない案件であると言えるだろう。
朔陽からすれば、こっちの世界側で問題を防ごうとしてくれる人が居るならば、その人に協力するのはやぶさかではないのだ。
「君からすれば、利権を見て動いている貴族達は不快きわまりないだろう。
ただ、ヴァニラ姫様だけは純粋な善意で動いている。
そこだけは誤解しないで欲しい。
君達を無事に帰してあげたいというあの人の気持ちだけは、疑わないでくれ」
「疑うわけがありませんよ。あの人のあの善意は、少し危なっかしいですし」
「危なっかしい、と来たか。
いや結構。その感想が出てくるようなら、私も君を信じられる」
「え?」
「君の他にも地球の子達に少し話を聞いてみたのだが……
頭の良さそうな子は手堅く、姫様のことを褒めていたよ。
そうした方が騎士の好感を手堅く得られる。実に賢明だ。
姫様を褒めるより先に心底心配している言葉を口にしたのは、君だけだね」
「……不快にさせてしまったでしょうか」
「いや、ゆえにこそ私は君を信じよう。
姫様と話していれば、いずれその理由も分かる」
「?」
どうにもこの騎士の本音が見えてこない。
朔陽からすれば利権で動く人間の方が分かりやすくて扱いが楽だ、とさえ感じる。
だが、そこは今踏み込むべき内容でもない。
「さて、今日は実は君に頼みたいことがあったのだが……
この世界に来た君達の人数は、合計29人でよかっただろうか?」
「はい。本来は30人と担任1人で構成されるクラスです。
曽山先生と火神楽火切という子がこちらに来ていないので、29人です」
「何人引き連れてもいい。ある村を調査して欲しいのさ」
「調査?」
パンプキン卿曰く。
一週間前から、ある川沿いの村で異変が起きているらしい。
村の名はクーリッシュ村。
人は多くないが、川魚と野菜が美味しいことで有名なのだとか。
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