ハーメルン
サーティ・プラスワン・アイスクリーム
その3

 翌日。
 野営を終えた朔陽達は、朝の内に目的の村へと辿り着いていた。
 朔陽達は行方不明になった人達を見つけるために、このみは干し魚を回収するために。
 村に辿り着いた彼らを、和やかな笑みを浮かべた村人が迎えてくれていた。

「ようこそ、クーリッシュの村へ。歓迎します」

 村にも、その村人にも、不穏な様子は見られない。
 何もおかしいところはない。
 村は平穏そのもので、のどかでのんびりとした雰囲気が広がっていた。
 ゆえに、朔陽は問う。

「この村には九日前に徴税人が、七日前に騎士様がいらっしゃったと思うのですが」

「いえ、いらっしゃってはおりませんが……
 何かの間違いではないですか?
 それか、この村に来る途中で不測の事態に見舞われた、とか」

 首をかしげる村人は、朔陽視点では嘘をついている風には見えなかった。

「最近、何か変わったことはありましたか?」

「最近……うちの村の食材の評価が、今年は特に伸びましたね。
 コノミさんが干し魚とやらを依頼して来た時にもそれを実感しました。
 いやはや嬉しいばかりですよ。あとは……ううん、思いつかないですね」

 "様子のおかしさ"は、普段の様子を見ていて初めて気付くもの。
 初対面の人の細かな違和感など、普通は感じられるものではない。
 ゆえに朔陽は何も気付かず、嘘つきの寧々だけがその違和感を察知していた。
 寧々はこのみの脇を肘で小突き、こっそり耳打ちする。

「話合わせて、恋川さん」

「……ん、悪巧みしてる感じの顔してるねぇ。いいともよ」

 このみは快く承諾し、寧々は朔陽と村人の間に割って入る。

「すみません、村人さん。ちょっといいですか?」

「はい、なんでしょうか?」

「恋川さんが前にこの村に来た時、村の近くで変なものを見たって言うんですよぉ」

 寧々はさらりと嘘をつく。
 顔を見ても声を聞いても、とても嘘だとは思えない自然な嘘だった。
 そこでこのみが頷くものだから、村人は一瞬だけ表情をこわばらせる。

 このみがこの村に来たのは徴税人が消える数日前。
 ならば村の周辺で『何か』を見ていたとしてもおかしくはない。
 村人の心中はいかばかりか。
 このハッタリは、村人のメンタルに大きな揺さぶりをかけていた。

「変なもの、とは? 詳細を話して頂けなければ、村の一員としては何も言えませんね」

「ああ、それはどうでもいいの。脇に置いておきましょうねー」

 寧々は村人の虚をつく形で、小気味よく話題を変えていく。

「ねえワンちゃん、私達国一番の騎士様の依頼で調べに来たんだよね」

「いかにも。拙者らがここに来たのは、パンプキン卿の指示ではあるが……」

「つまりねえ、もう王都の方でも送った人が戻って来ないってのは話題になってるわけよ」

「……何をおっしゃりたいので?」

「んー、別に」

 とことん話の核心にだけ触れない。
 寧々の方から話を振るのに、寧々の方からはぐらかし、そのくせ村人の様子を見て村人が嫌がりそうな話題だけを狙って振っていく。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/15

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析