第3話 淡島の少女
駿河湾の内湾、内浦湾に浮かぶ淡島と内浦を結ぶ小型の定期船。その中には俺と千歌、曜の3人しか乗っていなかった。
「そういえば、スクールアイドル部はどうなったの?」
「生徒会長のダイヤさんに「駄目だっ」て言われちゃったよー。何でスクールアイドル部は駄目ーなんて言うんだろう・・・。」
千歌は、俺の問についてそう答えながら船の縁に寝そべっており、自慢のデカい2つのみかんを強調していた。まあ、俺のほうがデカ・・・ゲフンゲフン、何でもない・・・。
「嫌い、みたい。この前クラスの子が作りたいって、言いに行った時も断られたって・・・。」
「えー!?曜ちゃん知ってたの!?早く言ってよー!!!」
「ごめん!!!・・・でも千歌ちゃん夢中だったし・・・。」
「とにかく、生徒会長の家って、網元で、結構古風な家らしくて・・・。だから、ああいうチャラチャラした物を嫌ってるんじゃないかって噂もあるし・・・。」
「チャラチャラじゃないのになぁ・・・。」
千歌は、そう呟きながら夕焼け空と空を飛んでいる鴎を眺めていた。船は淡島に向かって、ただゆっくりと進むだけだった。
船は淡島の船着場に停船した。俺達は船長のおっちゃんにお礼を言い、船着場の桟橋に降り立った。
「着いた!!!」
千歌は、元気よく桟橋に飛び移ると、淡島マリンパークを抜け、寄り道せずにダイビングショップに向かった。そこにいるのは、ダイビングスーツに身を包んだ青色の長い髪をポニーテールにしている大人っぽい雰囲気が漂う女性、俺の2歳歳上の松浦果南だ。
「遅かったね。今日は入学式だけでしょ?」
「まあ、色々あってね・・・。」
「はい!!!これ!!!回覧板とお母さんから!!!」
千歌は回覧板と千歌の母からの差し入れが入ったビニール袋を木製のデッキにいる果南に渡す。
「どうせまたみかんでしょ?」
「文句ならお母さんに言ってよー!!!」
果南がビニール袋を店内に置きに行ったとき、俺達は階段を上がり、デッキにあるパラソルの下にある椅子に座った。
「しかし、百香ももう高1か・・・。しかし、また大きくなったね百香。私を抜かしてもう何年経つだろうね。」
「軽く3年は経ってるよ。」
果南は、俺の前に立ち、身長を比べるためか右手を俺の頭上と果南の頭上を行き来させている。その時、店の奥から右足に包帯を巻いていて、〝I LOVE KANAN〟と書かれているTシャツを着ているガタイのいい男性が杖をつきながら出て来た。
「よう、よく来たな。」
「お父さん!?」
出て来たのは果南の親父。ガタイが良く(足を骨折しているが)、果南によく似た性格を持つ人だ。果南の髪の色や顔は母譲りだが、ほとんどの性格は父譲りなのだ(ハグは母親だけど)。この父親あってこの子あり。
「お久しぶりです。」
身長を比べるためか右手を俺の頭上と親父の頭上を行き来させる。ああ、2人共似てるなぁ・・・。
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