ハーメルン
くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞
くノ一の魔女〜ストライクウィッチーズ異聞 二の巻 その八

「うちのウィッチが手間をかけさせたようだね。見ていたよ」
 昼下がり。
 オティーリアは、執務室の窓から覗ける中庭を指差しながら言った。
 そこは、今朝方レッシュ少尉と仕合った場所だ。
「見られていたのですか」
 よりによって、一番見られたくない人物に見られていたとは。少しは場所を考えるべきだったな。
 雨が降っていなければ、稽古は気持ちのいい外でやりたいものなのだが。
「堪能させていただいたよ。レッシュは、一応うちでもかなり剣の腕が立つウィッチだったのだけどね。さすがはくノ一といったところかな」
「恐縮です」
「ふむ、では本題に移ろう。アプヴェーアによると、ブラウシュテルマーは残念ながら一基だけではなかったそうだ」
 ため息が漏れてしまう。
 予想はしていたが、やはりそうなるか。
「初美少尉が撮ってくれた写真からは、大型のブラウシュテルマーが五基確認された。小型のものは、さらにその倍はある」
「その数は、自分一人ではどうにもなりませんね」
 自分一人でどうにかできるのは、どうやっても一基だ。
 それ以上は警戒されて《迷彩》も効果が期待できないかもしれない。今までそんなことはなかったが、十分に想定される事態だ。
「もちろん、こちらもウィッチ一人にそこまでの無理を強制させるつもりはない。通常ならば、自走砲による遠隔攻撃なのだが、生憎と森のせいでままならない。たとえ攻撃できたとしても、大型のはともかく、小型のものは森のせいでどうにもならない。そこはわかるだろう?」
「はい。だからこそ、スツーカ隊を始めとした爆撃ウィッチは、陸戦ネウロイだけではなくブラウシュテルマー爆撃も行なっていました」
「よろしい。勿論我がカールスラントは、こんな時のことも考えて大口径の列車砲も用意はしていたのだが、今、グスタフとドーラは生憎と使用出来ない」
「白海上に出現した巣――グリゴーリの破壊、ですか」
「そういうことだ。フレイアー作戦は、現在実施のための佳境に入りつつあり、列車砲は白海に向けて輸送中で、その護衛に502部隊があたることになる。
 というわけで、陸戦ウィッチと空戦ウィッチ、それにスツーカ隊による電撃作戦が実施されることとなった。作戦名は《ぎっくり腰(ヘクセシュス)》だ」

 オティーリア中佐曰く、《ぎっくり腰》作戦はかねてより計画されていた反攻作戦の一つで、いずれ行わなければならないものだったらしい。他にもいくつかの作戦を立案、実行中との事だったが、それについては秘密だと教えてはくれなかった。まぁ、当然だろうな。
 ともかく、自分に課せられたここに至るまでの任務は、彼女が当初より計画していた本作戦の一部であったことになる。
 たかだか自分の陽動作戦だけで、506部隊に扶桑の枠を一つ用意するとか豪勢にすぎるとは思っていたが、こういうことか。
 すでに、本作戦に当たっての人員の配置は完了段階にあり、その中には自分も含まれていて、レッシュ少尉や自分の同僚もその作戦に駆り出されるという。
 まさに一大作戦の始まりだ。

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