終章:さらば地上よ!
ピラア・オブ・バーンが地上を襲い、大魔王バーンは感慨深げにバーンパレスから眺める。
「良くやった。余の心は晴れ渡っておる」
そう告げ、バーンは楽し気に魔軍指令ハドラーと、5人の軍団長を眺める。
「一人欠けてしまったが、何、別の者を宛てがうとしよう」
バーンはその時の事を思い出す。地上制圧完了後、死の大地を黒の核で吹き飛ばし、バーンパレスを空へと飛び立たせ、軍団長を再び召集し、労をねぎらった。
光魔の杖を持ちながら、バーンは部下の前で演説を行う。
「……太陽。実に素晴らしい力だ。いかに我が魔力が強大でも太陽だけは作り出すことができん。だが神々は人間に地上を与え 魔族と竜を魔界に押し込めた!!人間が我らより脆弱であるというだけの理由でだ!!だから余は数千年にわたって力を蓄え、地上を跡かたもなく消し去る準備を整えてきたのだ。間もなく地上は消えて無くなる…!!そして我らが魔界に太陽がふりそそぐのだ…!!…その時余は 真に魔界の神となる!かつての神々が犯した愚行を余が償うのだッ!!」
「では!魔の森はどうなる!」
「消えてなくなる。クロコダインよ、今のうちに部下をこのバーンパレスまで引き上げさせよ。」
「カアアアアアアー!」
ヒートブレス。激昂したクロコダインが焼け付く息を吹き付けるも、バーンは光魔の杖から魔力を噴出させ、その攻撃を防ぐ。直後にミストバーンが取り押さえ、今は魔牢に閉じ込められている。
死の大地近くにアジトを作っていたザボエラは、ザムザ共々研究資料を回収してバーンパレスの一室に運び込んでいる。他の軍団長もそれぞれ、部下を引き上げさせている。
地上を見下ろし、ハドラーは激しい葛藤に苛まされていた。
ようやく制圧したと思ったら、黒の核で吹き飛ばすのが真の目的だったと言われた。
自分のあの苦労は何だったのか?最初から吹き飛ばしてしまえば。いや、それでは妨害されるだろう。もう二度と手に入らないと思うと、なおさら地上がかけがえのない物に思えてきた。
「…ソアラ」
バランは間もなく消え失せる地上を見下ろす。本当にこれで良かったのだろうか?
ディーノが生きている可能性は限りなく0だが、これで完全な0になってしまう。
時として竜族、魔族、人間のいずれかが野心を抱いた際に天罰を与えるのがドラゴンの騎士の使命…だから、自分が人間に天罰を与えるのは間違いでは無いはずだ。
あの、醜い種族に。
「さて、ヒュンケルよ」
「はっ」
「パプニカ王女達をそなたが処刑出来ないというのであれば、この黒の核で地上ごと吹き飛ばす。そなたは今までも、そしてこれからも女を手に掛けない魔界の戦士として戦うが良い」
ぐっ、とヒュンケルは握りこぶしを作る。
詭弁だ。自分が殺さないだけで、他人が殺すのを傍観する。
父、バルトスならどうしていただろうか?地上を見下ろすも、答えは返ってこない。
「まもなく、爆発の時だ」
正午。地上に落とされた黒の核が爆発し…地上は吹き飛んだ。
閃光が収まると、マグマがたぎるみわたすかぎり不毛の大地が広がる、そこに太陽が降り注ぐ。
この世の地獄としか言いようのない光景だが、それを見、大魔王バーンは心の底から愉しそうに哄笑を上げる。
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