8 情報、広がり深まり
人類の敵か味方か、謎の未確認生命体二十二号の秘密に迫る!
……などという見出しの記事がそれなりに見られ初めたのは、二十二号が明確に四号と区別され始めた証拠と言えるだろう。
警察からの公式発表だけでなく、四号と似てはいるものの、明らかに別個体と分かる姿が確認されたのも大きい。
未確認生命体二十六号(メ・ガドラ・ダ)との交戦時、二十六号を殺害──いや、処刑した際に変じた姿は、遠間から撮影していたマスコミの写真により世間に知れ渡る事となり、包囲していた警察が迂闊にも家族に漏らしてしまった事により、二十二号が発した言葉すら水面下で広がっていた。
確かなソースは無く、噂としてだけ広がる、二十二号を示す言葉。
『アギト』
四号に似た姿を持つ、しかし、明らかに四号とは異なる理屈で動いているであろう二十二号がゴシップの対象にされない筈もない。
マスコミが、未だインターネット上の掲示板から情報を持ってくる事をよしとしない時代において、その名はただ水面下で、アングラな場面でゆっくりと広まっていった。
曰く、未確認生命体の処刑人、曰く、同じ種族だが異なる部族からの狩場を奪う為に送られてきた刺客、曰く、四号を解析して軍が作り上げた生体兵器。
その実体は不確かなまま、誰が訂正できるでもない場所で、静かにその存在感を増していく『アギト』の噂。
残虐性への恐れ、しかし、未だ市民を殺害した事が無いという事実がそれを薄れさせ、代わりにとでも言うように湧き出てくる好奇心が、密かにその登場を期待させ……。
しかし、その期待を裏切るように二十二号──『アギト』は、梅雨が明け、夏が到来する頃になっても、姿を表さない。
これまで、何らかのルールに基づいて活動しているのかと疑われる程一定の期間を置いて未確認生命体の惨殺死体を作り出していた二十二号。
一部の自称識者の間では実しやかに死亡説が囁かれ始め、新たな情報が生まれないが故に、忘れ去られる事は無くとも、警察関係者を除けば、多くの人々の間では意識の外に置かれ始めた。
そんな中、二十二号が活動を休止している理由を知る者が、僅かながらに存在していた。
……事は、三十七号(メ・ガリマ・バ)の死体が、中央区晴海の船着き場近くに遺棄されていたのを、通報を受けた警察が駆け付けて確認した、その日の夜に遡る。
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拝啓。
梅雨の中休み、夏の到来を感じさせる強い日差しに、雨に濡れた新緑がひときわ濃く感じられる今日このごろ、四号様は如何お過ごしでしょうか。
この度、戦闘時に手足の痺れ、新たな力の萌芽を感じ始めておられるという事で、一筆啓上申し上げます。
グロンギの頭領とも言えるン・ダグバ・ゼバ氏との戦いにおいて、凄まじき戦士の力が必要である事は先日お伝えした通りです。
しかしながら、凄まじき戦士の力は扱いが難しく、青空の如く清らかな心などを含む諸々の極まった精神的な適性が無い限り、使いこなすことは容易ではありません。
しかし、本来想定されていない仕様ではありますが、アークル装着者へ雷、或いは生命を脅かすレベルの強力な電気エネルギーを加える事により、限定的にその力を引き出す事が可能なのです。
四号様の肉体におかれましては、先日に仮死状態を経験した際に医療行為の一環として電気ショックを受けることにより、僅かながら力の解放が行われようとされております。
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