ハーメルン
ブレイブウィッチーズ 星降る夜に
第1話 雁淵ひかり、再着任す 前編

 あの色を、覚えている。
 全てを見通す緋と、全てを貫く蒼。
 その手で触れてもらえること、その声で語りかけてもらえること、
 その背を、追っていられること。
 地面から見上げる輝きは、途方もなく鮮やかで、鮮明で、
 ただ、ただ美しくて。
 届かなくてもよかった。いつまでも、その輝きを目にしていたかった。
 その中でこの目が擦り切れ果てて、終わっていってもよかったとさえ、思えたほど。
 なのに、それなのに、全ては唐突で、あっけなくて、どうしようもなくて。
 出来る事なんて、何一つなくて。
 残ったものなんて、痛みだけしかなくて。
 けれど、それでも。
 そうだとしても。
 例えどんなに日々を重ねて、何もかもが擦り切れて無くなったとしても。
 ――わたしは、その色を、忘れることはないだろう。



 *



 それは、一九三九年の事だった。
 その存在は、前触れも無く空を埋め尽くし、人類に侵攻を仕掛けてきた。何故、どんな目的があって……そんな事も明かさずに、彼らは無造作に全てを奪い、破壊し尽くした。
 出自も、所以も、道理さえわからない。
 太古より、人類はその異形との戦いを繰り広げていたのに、だ。
 彼らが人類に全面戦争を仕掛けるのは今回で二度目ではあるのだが、月日が経てど彼らの正体や目的、どういう性質を持った存在であるか――わかっていることはあまりにも少ない。
 瘴気をまき散らし、大地を腐らせ、金属を根こそぎにする。すなわち、目に見える全てを破壊しないと気が済まない“たち”であるということ。身体の内部に内包されたコアを破壊すれば一応は撃滅せしめること。わかっていることはたったのそれだけだった。

 だから人類は、彼らに、
 ――そう、“正体不明(ネウロイ)”と名付けた。

 正体不明のまま、彼らは何もかもを奪っていく。
 瞬く間に人類は居場所を追いやられた。
 欧州の大半は彼らの“巣”に占拠され、人の住まう場所ではなくなった。このままでは全てが奪われ、人類は異形に敗北する。
 そんな未来は非現実的ではなくなり、もはや目の前に差し迫っていると言っても良かった。
 しかし、そんなギリギリの瀬戸際の中、人類は唯一彼らに有効な対抗手段を見つける。

 魔法力をその身に宿し、瘴気をまき散らす彼らに唯一接近が可能な少女の存在。
 魔女(ウィッチ)
 武器を手に取り、宮藤一郎博士が考案した現代の魔法の箒(ストライカーユニット)を装着した彼女達は、戦闘機や戦車、軍艦を活用したとて発揮し得ない戦果を容易に叩き出した。
 彼女達ウィッチの活躍によって、欧州への侵攻はギリギリで押し留めたのだ。
 そして少しの時間が経ち、ネウロイ撃滅に対して多少なりともノウハウを得た人類は、一転攻勢に打って出る。

 一九四四年、第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』によるガリア開放。
 以前までどうすればいいかもわからなかった“ネウロイの巣”の撃破によって、それは成されたのだった。

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