ハーメルン
ブレイブウィッチーズ 星降る夜に
第4話 果てぬ痛み 後編

 戦況は、ゆるやかに、されど確かに終局へと向かっていった。
 いくつも用意してきた打開策。
 そのどれもが通じなかったわけじゃないし、むしろ十全の効果を発揮して戦況を作ってくれたと言えるだろう。
 けれど、それでも勝利には至らなかった故に、徐々に詰められるように退いていった。

「……失敗だ……!」

 暗雲立ち込める空にぽつりと放たれた言葉。
 それが現在の状況を切実に物語っていた。
 “グリゴーリ”の真コアを特定するために“絶対魔眼(ぜったいまがん)”を使用した孝美。
 単身突撃するようにそうしたものだから、一時はあわや、というところまで追い詰められたが、隊員全員で彼女を護衛することによってなんとか窮地を脱した。
 それでも襲い来る砲撃すべてを防ぎきれず負傷する孝美だったが、なんとか真コアを特定し、超魔導徹甲弾は放たれた。
 ――が、しかし。
 吹き飛ばしたはずの雲を防壁のように再度展開した“グリゴーリ”は、確殺の一撃を難なく防ぎきった。
 時間をかけすぎたのだ。
 恐らく雲を再展開するのにはギリギリだったはずだ。
 最初の段階から孝美が“絶対魔眼(ぜったいまがん)”を使用して真コアがあることを突き止めていれば、直接当てた超魔導徹甲弾の一撃で彼を葬り去ることができただろう。
 しかし、それはあるはずのないたらればを言っているに過ぎない。
 真コア型自体が最近一部で出現し始めたばかりの特異型で、研究も情報も出揃っていなかった。
 そんなものに対して対策が出来るようであれば、人類はネウロイにここまで追いやられることもなく、またここまで苦戦することもなかっただろう。
 ――全ては過ぎ去ったあとのこと。
 人類は彼らに比べてずっと愚鈍で、馬鹿で、そして脆弱だというのは、
 誰しもが知っているような当たり前の事実だった。

「……孝美の状態は?」
「傷も塞がってますし、脈も体温も正常です……ただ……」
「……そうだろうな」

 “絶対魔眼(ぜったいまがん)”を使用し、一撃を受けた孝美。
 疲労も負傷もジョゼがなんとか治癒し、今も治癒魔法を行使しているが、万全とは言い難い。
 作戦のほうは既に万策尽き、本部からは撤退命令が出ている――これから長い撤退戦が始まるだろう。
 ペテルブルグは滅ぶ。
 これは間違いないけれど、それ以上を認めるわけにはいかない。
 手負いの孝美を抱えたまま、乗り切れるかどうか。
 ……。

「……クソったれめ」

 考えれば、考えるほどどうにかなりそうだった。
 けれど、それでも事態は進んでいく。
 動いていく。
 取り返しがつきそうにもない。
 最悪だけが、霧のように辺りに立ち込めていた。

「……とにかく、動くしかないか」

 現在地はペテルブルグ周辺の雪原。
 ここで往生していてもしょうがない。
 じきにここもネウロイの占領区となるだろう。
 じっとしているだけの暇なんてない。

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