ハーメルン
ブレイブウィッチーズ 星降る夜に
第1話 雁淵ひかり、再着任す 後編

「そういえば今日、新人の子が来るみたいだよ、ニパくん」
「え、そうなの?」

 哨戒任務の途中、ヴァルトルート・クルピンスキーはニッカ・エドワーディン・カタヤイネン――通称ニパに耳打ちする。
 あまり褒められた行為じゃなかったが、“グリゴーリ”が動きを止めてからネウロイの侵攻はぴたりと止まっているせいでネウロイの出現確率はぐんと落ちた。そうは言っても、一応ペテルブルグ周辺には他にもネウロイの巣が点在しているので、やらないわけにはいかないのだけれど。

「うん。前に先生と隊長が話してたのをたまたま聞いてね。どんな子かまではわからなかったけど、口ぶりからするに相当のエースを引っ張ってきたみたいだよ」
「へえ……盗み聞きしてたとかじゃないんですか? クルピンスキーさんって趣味悪そうだし」
「流石にそんなことはしないよ……ほんとうにたまたま。でもこのご時世だし、引き抜いてくるっていうのもなかなか難しい気がするんだけどね……となると、知り合いとか? それなら、エイラくんとサーニャちゃんとかだったりするのかな。そうだったらいいなぁ。あの二人、かわいいし」
「クルピンスキーさんはいつもそればっかだなぁ」

 ヴァルトルートの口ぶりに、ニパは顔をしかめる。
 彼女は酒好き女好きの享楽主義者で、気に入った女性が居ればすぐに声をかけるような軟派なところがあった。金色の短髪、褐色の肌、長身という格好のいい風貌がそれに拍車をかけた。かくいうニパ自身も数えきれないくらい口説かれてきたのだが、その全てを断り続けている。
 いい加減にちゃんとした関係を誰かと持ってくれればそういった面もなりを潜めるだろうとニパは思っているのだが、出会いの多さに反して続く関係を持つことはあまりないようだった。
 そしてニパは、金髪の短髪という点では同じだが、スオムス人特有の肌の白さもあって、どこか少年のような風貌を持ち合わせている。しかしそれに反した胸の大きさと、朗らかな性格が女性らしさを感じさせる。持ち前の馬鹿みたいな不幸さも合わせて、どこかアシンメトリーな雰囲気を持つ少女だった。

「あ、でもイッルとサーニャさんはヴェネツィアの件で501が再結成したみたいだし、ないと思うけど……隊長のことだから、声は一応かけてそう」
「あはは、そうだね……何にしろ、可愛い娘だったらいいな。僕らが戻る頃にはもうその娘、基地に居るんだろうなぁ。顔見せは夕食の時だろうけど、仲良くできると良いよね」
「クルピンスキーさんのそれは別の意味でしょ……」

 うんざりしたような表情でニパが言う。
 ヴァルトルートは、その悪態にやけに嬉しそうな表情でうなずいた。どう攻めようか今から気が気でないらしい。

「でも、新人かぁ……」

 しかし、そんなうきうきのヴァルトルートとは裏腹に、ニパの表情は重い。
 何やら思うところがあるらしかった。

「どうしたの? なにか思うところでも?」
「いや、さ……」

 大したことじゃない。
 褒められた思考でもない。
 でも、それでも、そう思うことを誰が止められようか。
 たった三ヶ月。
 されど三ヶ月の間に、全てを割りきれるほど、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンは大人にはなりきれなかっただけの話だから。

「今回の人って、言わばカンノと孝美さんの代わりってことになるでしょ? そう思うと、なんか……」

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