ハーメルン
ブレイブウィッチーズ 星降る夜に
第2話 羽ばたけ、血塗れの翼 後編

 ペテルブルグ上空一〇〇〇メートル。
 ニパ、ヴァルトルート、ひかりの三人は格納庫(ハンガー)から一直線に飛び出して、すぐさま何もかもを見渡せる高度までたどり着く。
 これから行うのは決められたルートを辿る哨戒任務。
 ニパ、ヴァルトルートの二名からすれば普段からやっているなんでもない任務で最近はもっぱら暇だが、それでもいつもと違う感触と喜びがあった。

「ひかりちゃん、すごいね」
「何がですか?」
「前よりすごくきれいな飛び方になってる。この調子だと501のスーパーエースにも引けをとらないんじゃないかな」

 願うならば、もうちょっと下のアングルから眺めさせてくれると嬉しいかな、と少し後ろを飛ぶヴァルトルートが言う。
 その要望を無視しながら、ひかりはぼそり、と呟くように答えた。

「……エイラさんはもっときれいな飛び方でずっと速かったですけどね」
「そりゃあ、エイラくんはねえ。あんなにきれいな飛び方をするウィッチは中々いないよ。彼女は特別だ」
「……そうなんですか?」
「ああ。彼女の本領はかわいさや未来予測の固有魔法だけじゃない。それに左右されない彼女自身の力量もずば抜けていると思う。その点で言えば孝美ちゃんだってそうだったけどね。マジックブーストを使った僕でとんとん、ってとこかな」

 かつて、孝美がこの隊にやってきた際にヴァルトルートは彼女と模擬戦をやったことがあった。
 結果は引き分けで、マジックブーストを使ったクルピンスキーに孝美は難なくついてくるほど。実力者揃いの502でも十二分にやっていけることを証明した。
 全てはひかりを安全な後方地帯へ送るために。
 ……。

「もちろん、この隊に来た時のひかりちゃんからするともう、それは恐ろしくなるほどの変化だよ。それにまだまだ、もっとずっときれいに飛ぶつもりなんだろう? じゃあいつか追いつけるさ」
「……いえ、無理だと思います」
「そう? まだまだ行けそうに見えるけど」
「チドリは行けると思いますが、わたしのほうが、魔法力が足りなくてだめですね。これ以上は多分ですが墜落します」
「いいね。ブレイクウィッチーズさまさまだ」
「笑い事じゃないですよ」

 軽口を叩き合いながらネウロイを探す。
 ニパもヴァルトルートもここ最近の襲撃ペースからして今日もまともにネウロイが見つかるとは思っていない。小型ネウロイが一機見つかれば良いほうだろう。
 ひかりでさえもあまり期待していない。
 もちろん必死になって探すつもりではあるのだが、話を聞く限りどうだか。
 血の色をした眼をきょろきょろと動かす。
 気配すら感じ取れなかった。
 不穏さ、というものが欠如している。
 遠くに沈黙した“グリゴーリ”が微かに見えるだけだった。

「あーあ、ひかりちゃんが来たってのに、今日もどうせ暇なんだろうなぁ。もう“グリゴーリ”倒しに行っちゃう?」
「馬鹿言わないでよ……一応任務なんだから、まじめにやらないとだめですよ」

 ため息をつくニパに、ヴァルトルートは口を尖らせる。

「はいはい……っと。そういえばひかりちゃん、カウハバの時はどんな風だったの?」
「どんなふう……とは?」

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