ハーメルン
ブレイブウィッチーズ 星降る夜に
第3話 例え、報われずとも 後編


 怪音を上げて叫ぶ異形。
 その瞬間、そのけたたましい悲鳴とは別の轟音が響く。
 熱した鉄を、思い切り金槌で叩くような、そんな甲高く、硬い音。
 衝撃さえ伴って、赤黒い亀裂が空間に走ったような錯覚を起こした。
 同時に、足元の森林から土煙が上がる。
 豊かな自然が追いやられて、瘴気でたちまちの内に腐る。
 ……そして土煙とは違った種類の白い煙が空へと登っていって、
 その姿をネウロイへと変える。
 そして空を埋め尽くす群体の一つとなって、小さな体をはためかせた。

「……そういうことですか」

 唾さえ吐き捨てそうな程に不機嫌な表情で、ひかりは(かぶり)を振る。
 目の前の群体も、恐らくそうやって作られたのだ。
 周囲の地形を破壊しつつ小型ネウロイを生み出す“本体”が居て、何処からかはわからないが――恐らく占領区からだろう――“道”を作りながら、そして手下さえ増やしながらここまで来た。
 彼らの群れに一人で突っ込む自分の姿を想像する。
 ……きっと、本体の姿さえ見れないで撃ち落とされてしまうだろう。
 それくらいの数だし、広域に作用するような攻撃方法だって無いし、いちいち全てを破壊していたら自分の命より先に銃弾が切れてしまうに違いない。 
 一つ、息を吐く。
 そしてゆっくりとインカムに手を当てた。

「……クルピンスキーさん」
『なに、ひかりちゃん、任務中に。……あ、わかった。デートのお誘いかな?』
「違います。そんなこと言ってるとまた先生に怒られますよ」
『あっはっは、何を言うんだい。別にひかりちゃんが思ってるようなことはないしそもそも先生は僕の事が大好きだから謝れば許してくれるさ……ひぃん!』

 殴られたな、と思う。
 けれどそんなことはどうでもいい。

「ネウロイを見つけました。報告通り大型です」
『そうかい……で、一人で突っ込んでいかないでわざわざ僕に連絡をよこすってことは、何か訳ありかい?』

 訳ありなんてものじゃない。
 明らかに一人でなんとかなるレベルを超えている。
 もちろん、慣れないし納得も出来ない。一人で倒しきれるならそれが一番いい。
 それでも、アレをひかり一人で倒すのは――引いては、此処に居る定子、ジョゼの二人と協力しても撃墜することは難しいだろう。
 なんせどうしていいかもわからない。

「察しがいいですね。現在位置はどこですか?」
『ペテルブルグから二〇キロメートル離れたとこくらいかなぁ』
「そうですか、それなら一〇分ほどでこちらまで来れると思いますが、なるべく早めにお願いします」
『了解……っと!』

 それから五分ほどしてヴァルトルートはやって来た。言葉通り急いで来てくれたみたいだ。
 並のウィッチならそれだけでへとへとにもなりそうなほどの強行軍だが、彼女の顔には汗一つ浮かんでいない。当然ついてきたエディータとニパにも。

「ひかりちゃん、状況はどう?」
「特に変わってないですが……小型ネウロイの数は増えましたね」
「小型……? そういうことかい」

 ひかりの物言いに、ヴァルトルートは皮肉げに口元を歪める。

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