第3話 ウルトラマンと少年
「このままだと体がもたないってことか……! だけど、どうしたら……!」
『これだ……! これを使えば、俺はお前と一体化して、エネルギーを回復出来る……!』
すると、ウルトラマンの目が光り――弓弦の手元に、赤いペンライトのようなものが現れた。
「一体化……! 擬態の代わりに、俺の体でエネルギーを回復するってことか!」
『そ、そうだ……がふっ! た、たの、む……』
「わかった……! よし、行くぞッ!」
弓弦は躊躇うことなく、ペンライトのスイッチを押す。ウルトラマンの体が一瞬で消え、彼を打ち据えようとした恐竜戦車の尻尾が、地面に突き刺さったのはその直後だった。
「今だ! 一斉射撃ィィィ!」
勢い余って尻尾を突き刺してしまったせいで、身動きが取れなくなった恐竜戦車。その好機に乗じて、BURKの隊員達が一斉に光線銃を放ち始める。
この混乱と激戦に乗じて、弓弦はペンライトを手にしたまま、市街地から離れるように走り出すのだった――。
◇
市街地からやや離れた、丘の上の公園。そこにたどり着いた弓弦は、未だ街中で激戦が続いている様子を遠巻きに眺めながら、ベンチに腰掛ける。
――ウルトラマンと一体化した影響なのか、かなりの距離を走ったにもかかわらず、疲労は全くなかった。
『ありがとう……お前のおかげで、命拾いできた。俺はカイナだ』
「どういたしまして、オレは風祭弓弦。……えぇと、ウルトラマンカイナって呼べばいいのかな」
『よしてくれ、俺はウルトラマンなんて器じゃない。カイナって呼んでくれればいい。……ちなみに、俺が渡したそれはカイナカプセルって言うんだ。さっきのスイッチを押せば、お前は再び俺に変身することになるから、気をつけてくれよ』
ペンライトから、ウルトラマンの声が聞こえてくる。カイナと名乗る彼は、どこか憂いを帯びた声色だった。
「そうか……。じゃあ、カイナ。君は……あの怪獣を追ってこの星に来たのか?」
『あぁ、まぁな。……といっても、あんまり綺麗な理由じゃない』
「……?」
『……命の恩人に隠し事なんて、ダメだよな。お前には話しておくよ』
――やがてカイナは、観念したように自身が地球に訪れた経緯を語り始める。
過去に地球にやって来た歴代ウルトラマンと同様、カイナもM78星雲にある「光の国」の出身だった。
両親を怪獣との戦いで失って以来、彼は大切なものを守れる強さを求めて宇宙警備隊の門を叩いたのだが――若過ぎることを理由に、入隊を拒否されてしまったのである。
そこで、宇宙を彷徨う怪獣を退治して武勲を上げ、自分の力を宇宙警備隊に照明しようと決めた。例え年若い身であろうと、実力があると見せつければ警備隊も自分を放ってはおかない――そう考えたのである。
だが、結果としては惨敗。怪獣を倒せなかったばかりか、力任せに戦うあまりエネルギーを無駄に消耗し、地球人の体を借りて命拾いする始末。
武勲どころか地球の民に迷惑を掛けてしまい、意気消沈……といったところなのだ。
「……」
『……ってわけだ。へへ、情けねぇよな……。何が警備隊も俺を放っておかない、だ。とんだウルトラマンがいたもんだぜ』
弓弦は、最後にそう言って自虐的に笑うカイナの話を、真摯に聞き続けていた。
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