ハーメルン
ウルトラマンカイナ
特別編 ウルトラカイナファイト part2


 彼らは全員、ウルトラマンとしての1年間に渡る任期を終えた現在では、ごく普通の人間として暮らしているのである。地球を救った救世主としての名声よりも、ウルトラマンになる前と変わりない、当たり前の日常を望んでいるのだ。

 カイナの後輩達を「イカロスの太陽」で呼び寄せるという判断は、依代である彼らを再び戦場へと巻き込むことにも繋がりかねない。身命を賭して地球を守らねばならないBURKの隊員として、それだけは看過できなかったのである。
 かつてはウルトラマンと共に戦った英雄であるとはいえ、名誉よりも安寧を求めた青年達を、この期に及んで戦いに駆り出すなど。

「……安心したよ、駒門。お前のような奴が1人でもいる限り、BURKは安泰だ。例え、俺がいなくなろうともなッ!」
「た、隊長ッ!」

 それが人として、BURKの隊員として最も正しい見解であることは、弘原海自身も承知していた。その上で彼は、牽制のために琴乃の足元を光線銃で撃ち抜きながら、発信装置に駆け寄って行く。

 ――弓弦が搭乗していたBURKの戦闘機が、バードンの火炎放射に焼かれ墜落する瞬間。2人は、カプセルを掲げた彼がカイナへと変身する場面を目撃していた。
 今まさに命懸けで戦い、死に瀕している巨人が自分の部下なのだと知ったからこそ。弘原海は隊長として、是が非でも隊員を守らねばと覚悟を決めてしまったのである。

 琴乃は阻止する暇もなく、装置への接近を許してしまうのだった。

「この装置を起動させるということは、軍の禁忌に触れることにも等しい。俺は今回の戦いを最後に、BURKから退くことになるだろう。……後はお前に任せたぞ、駒門ッ!」
「待ってください隊長! 隊長ォッ!」

 敬愛する隊長が下した、悲壮なる覚悟を伴う決断。その瞬間を目の当たりにしていながら、琴乃はただ手を伸ばすことしかできずにいる。

「これが罪だというのであれば! その罰は全て、この俺が引き受けるッ! だから頼む……どうか、頼むッ! かけがえのない俺の部下を、お嬢様の夫になる男を……救ってくれえぇーッ!」

 そして、弘原海が装置のレバーを勢いよく倒した瞬間。

 そこから伝播するようにアンテナへと駆け上がっていく青白い電光が、宇宙の彼方を目指して解き放たれていくのだった――。

 ◇

 「イカロスの太陽」から発信された、人工のウルトラサイン。カイナの窮地を報せるその閃光は、東京にいるカイナとテンペラー軍団も目撃していた。

『……!? あ、あのサインは……!』
『あの救難信号は……地球人類共の紛い物か。ふん、なんという杜撰な作りだ。あのような信号に反応するウルトラマンがいるとすれば、よほどの馬鹿か……偽造を承知で駆けつけて来るような、酔狂者であろうな』
『……ッ!』

 弓弦も、「イカロスの太陽」という禁忌の存在は弘原海から聞かされていた。それを使えば、BURKからの永久追放は免れないということも。

(弘原海隊長ッ……!)

 そして今、その装置を管理出来る人物は弘原海しかいない。そこからこの現象の背景を汲み取ったカイナは、彼の覚悟を悟り拳を震わせる。
 彼の献身に報いるためにも、必ず勝たねばならないと。

 ――そんなカイナの闘志に、呼応するかの如く。霧散していく信号の向こうから、光り輝く五つの星が現れた。

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