雪の国の民
雪忍達の襲撃を逃れた後。
寝込んでしまった雪絵を休ませるため、船を一度、近くの波止場で止めることになった。
しかし、船を止めた理由はそれだけではない。
船内にある一番大きな部屋。
そこには再不斬、ナルト、ハク、長十郎、三太夫、マキノ、助監督の七人がテーブルを囲み、席に腰をかけてきた。
話し合わなければいけない事があったからだ。
開口一番、再不斬は今回の襲撃について事情を知っていそうなマネージャーの三太夫を問いただす。
あの戦闘の途中、再不斬は自慢の聴力を活かして、雪絵と三太夫の会話を盗み聞いていたのだ。
「で、話してくれるんだろーなァ、三太夫さんよォ。依頼でウソを吐かれたら困るぜ」
暫く沈黙していた三太夫だが、観念したのか口を開き、静かに語り始めた。
「はい。実は雪絵様、姫様は正真正銘、この雪の国の跡継ぎなのです。私が姫様のお側にいたのはまだご幼少の頃でしたが……」
「なるほど。それでその姫様を狙って、さっきの雪忍とかいうふざけた連中が現れたわけか……本当の姫様の護衛となりゃー、下手すりゃAランク任務だぞ」
「「「Aランク任務!?」」」
今回の任務は映画女優の護衛で、Cランクに設定されていた。
それがいきなりAランクほどの任務と宣言され、ナルト達は驚きの声をあげる。
再不斬はさらに三太夫を問い詰め、
「だが、なぜ依頼でそう話さなかった? 見たところ、どこぞの橋作りのじじいみてーに金がねー訳じゃねェだろ?」
「いえ……黙っていたのは依頼でウソを吐くためではなく、姫様に雪の国について教えないためでした……」
「どういう意味だ?」
三太夫は頷き、遠い昔の夢を思い出す面持ちで、ゆっくりと語り始めた。
「先代のご主君であった風花早雪様は姫様を大層可愛がられており、雪の国は小さいながらも平和な日々を送っていました。あの十年前、ドトウめが反乱をおこすまでは! 」
ドトウ?
聞いたことのない名だった。
再不斬達の疑問を察してか、三太夫が話を続ける。
「ドトウは雪忍達を雇い、この国を乗っ取り、美しかった風花の城を焼き落としました。私はその時に、姫様もお亡くなりになったものとばかり……だからこそ、映画に出演していた姫様を見つけた時はどんなに嬉しかったことか……よくぞ、よくぞ生きていて下さったと……」
そう涙を流しながら語る三太夫。
しかし、その言葉を否定したのは……
扉の前に立ち、冷やかな視線を送る女性、
「……あの時死んでいればよかったのよ……いえ、生きてはいるけど心は死んでいる。あの時以来、私の涙は枯れてしまった」
雪絵だった。
涙が枯れてしまった……なるほど。
演技の時に目薬を要求した理由はそれか。
再不斬はこれまでの情報で、大体の流れを理解した。
雪絵の言葉に、三太夫は目頭を押さえてから、涙を拭き取り、話を続ける。
「私はその後、なんとか富士風雪絵のマネージャーとなり、姫様を雪の国へお連れする機会をうかがっていたのです」
「えっ! じゃあ、オレ達も騙されていたのか?」
空気を読み、今まで口を閉じていた助監督が驚きの声をあげた。
すると、突然三太夫は席を立ち上がり、マキノと助監督に頭を下げて、
「それについてはお詫びします。しかし、これも雪の国の民のため……」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/6
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク