ハーメルン
チート染みた力を持っているけど母音ーッンしか発せられない
あいいぅうあああ うぃいうう・おーうお
*
夏休み。
厳密に言えば九校戦の時期だって夏休みだったのだが、休みらしい休みではなかった。
まぁ運動会を観戦していただけなのだが。
さて、九校戦の最中に(半ば無理矢理)約束した、妹の彼氏こと北山航君の別荘に行くことになった件で、僕は今美容室……ではなく、妹の部屋にいる。
そこで受けているのは、化粧。
もう一度言う。
そこで受けているのは、化粧だ。
「あおあぁ、あんええいぉうあお?あのさぁ、なんで化粧なの?」
「んー? ふふーん、一高の優勝挨拶の時、一高の技術スタッフを見たんだけどさー。五十里啓さん? って人見て、ビビっと来たんだよね」
「うんうんえんああ?ゆんゆん電波が?」
「ずんずんセンター?」
「ううん、いあう。えおいいいあいえううん、違う。でも気にしないで」
椅子に座らされ、大きな鏡の前で色々されている。
既に髪は黒に戻していて、ワックスも取っているので普段の僕を知る人が見れば誰だお前状態だ。その上に化けの皮を圧し固めているのだから、性別すら行方不明である。
「そう! 既に流行の終わった
男の娘
(
おとこのこ
)
を! さらに進化!!
男の女性
(
おとこのヒト
)
の時代だよ!」
「……あぁおいういえおまぁ落ち着いてよ」
多分その時代は一世紀くらい前にすでに終わっているから。
というか啓先輩に失礼だろう。参考にするのは花音先輩の方だと思うのだが、勘違いしているのかな?
「青兄はお母さん似だから、ちょーっと化粧してあげれば違和感ないってー。これで青兄のお友達さんも青兄にめろめろ!」
「おえあおあうそれは困る」
「あはは、冗談冗談。でもほんとズルイよねー。航君もケッコーカワイイ系なんだけど、青兄は綺麗系っていうか、出来る秘書官、みたいな雰囲気あるし」
「いっあいああおおいあええうあいあいあえ実際はまともに喋れすらしないがね」
「そこは特に気にならないかなぁ。私は青兄の言葉わかるし、昔から青兄が周りの子達の何百倍も頭良かったの知ってるし!」
……ええ娘やぁ。
本当、僕には勿体の無いくらいの妹。可愛いなぁ可愛いなぁ。
ちなみに頭脳の方は今となってはほぼほぼ横並びである。勉強は欠かしていないが、歴史とか魔法学とかでかなーり躓く。数学や言語学は負けるつもりはないが。
「はーい目、閉じてー」
「ん」
言われるがままに処理を施されていく。
というか、中学一年生って普通にお化粧の知識があるものなんだなぁ。あぁでも、アイツも結構早い時期からやってたっけ。
「それに青兄には音楽があるじゃん。むしろそっちの道で生きていけばいいのに」
「いおーあーえうあ、あいあリコーダーですが、なにか」
「嘘吐きー。色々演奏できるの知ってるんだからね。誰が青兄の仮想型端末管理してると思ってるの?」
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