ハーメルン
もしも八幡とあーしさんが運命の赤い糸で結ばれていたら
11話
「今年も後少しだねー」
「ねー」
12月31日、大晦日の19時半。私は家族でおばあちゃんの家に来ていた。元々お正月くらいは家に帰ろうと思っていたのだが、せっかくだから今年は親戚揃って年を過ごそうとなり今に至った。親戚と言っても母方のおばあちゃんという性質上、集まっているのは私のところと優ちゃんの家族だけである。そんなわけで今私と優ちゃんは居間でくつろいでいた。
ここはゆうに築70年を超えており、今のようなコンクリート造りのものではなくて、構成されている殆どが木で出来ている。普通の家屋にしてはかなり広く、こうして優ちゃんと2人で床に座り込んでもまだまだスペースが余るほどだ。恐らく今いる7人(私の家族と優ちゃんの家族、それにおばあちゃんを合わせての数。おじいちゃんはすでに他界している)が集まっても圧迫感を感じないだろう。
「お姉ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんはいないの?」
「ヒキオは…、お兄ちゃんは来ないね。来て欲しかった?」
「うん。だってあれから1回も会ってないもん」
視線を落とし、少しもじもじしながら呟く。それにしても、ホント優ちゃんはヒキオのどこがそんなに気に入ったんだろう。確かに年下相手だとヒキオは無条件で優しくなる。それはあの後輩生徒会長を見ると顕著にあらわれているし、度々会話に出てくる妹の影響もあるのだろう。ただそうだとしてもたった1日で私と同じくらい、ともすると私より懐いているようにも見える。
…やっぱロリコンの成せる技なのかな。これ言ったらヒキオ怒りそうだな、なんて考えながら優ちゃんの頭を撫でていた。
「んっ、何?」
「会いたい?」
「誰に?」
「お兄ちゃん」
何を思ったのか、私はふとそんなことを提案していた。優ちゃんはすぐに処理できなかったのか大きな目をまん丸にしていた。
「うん!」
「だよねぇ」
今からは現実的に不可能だ。ヒキオの住んでいるアパートからここまでは割と骨が折れる距離であり、そもそも優ちゃんが起きていられる時間までに到着できるとも思えない。
「今日は無理だけど、またすぐに会えるようにしとくね」
結局私はお茶を濁した。いらない期待を持たせちゃったかな、なんて反省していると優ちゃんはすぐに返答した。
「じゃあ明日!明日の神社!」
「ああ、初詣。それなら…」
どうなんだろう。尻すぼみに声のボリュームが小さくなり、無意識のうちにスマホを手に取る。この時間に寝ているなんてことはないだろうし、今から連絡すればもしかするといけるかもしれない。ただそんな勝手なことをお願いするのはなんというか、気が引けた。
……実際はそんなことより我儘なお願いもしてるんだけどね。要は合理化してる、私がヒキオに連絡しない理由を。
「クリスマスん時はいけたんだけどなあ…」
「??」
私の呟きはすぐに消え、興味を失った優ちゃんはカーペットの上にごろんと寝転がった。
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