ハーメルン
もしも八幡とあーしさんが運命の赤い糸で結ばれていたら
14話
ピンポーン。
日もまだ昇きっていない時間。空耳かと思われたインターホンを無視し、一応スマホを確認する。時刻は午前5時半であり、やはり空耳だと決めつけて再び眠りにつく。
ピンポーン。
「……空耳であってくれよ」
起きたくないと主張する体に鞭を打ち、ゆっくりと体を起こす。両腕を天井へ上げ、大きく伸びをしてベッドから出る。やっと暖かくなってきたとはいえ、未だほの暗い早朝は空気が冷たく身体を震わせながら玄関へ向かった。
ドアの前に立ったところで、俺は覗き穴から外を見る。前回は由比ヶ浜だと気付かずに心底嫌な顔をしてしまったため、同じ轍は踏みまいとの考えだ。
「……葉山?と、あれは…」
男が女を背負っているように見え、しかもその男が葉山っぽい。だが葉山に家は教えたことがなく、それにこの時間に訪ねてくるのも不可解だ。一抹の恐怖心を覚えながら、ゆっくりとドアを開けた。
「やあ比企谷。久しぶりだね」
件の男はやはり葉山であり、スポーツウェアを着ていた。右手にはリストバンドもあり、恐らく朝走っていたのだろう。しかし汗が見えないことより葉山は走り始め、もしくは背負っている女をおぶってから長い時間が経ったかのどちらかなのは明白である。
「後ろのは…、三浦か」
いつものコートと特徴的な髪型。さらに葉山との関連から三浦だと判断するのは容易だった。なぜかメイクは落ちておらず、また三浦はおぶられてなお今も寝ているようだ。
「朝走っていたら駅の柱のところで寝ていたんだよ。家に送ろうと思ったら急に優美子が道案内してくれてね。優美子の家かな、なんて思っていたんだけど」
「てことは寝たのはついさっきなのか」
「だね。そこのアパートって言ったっきり。表札見たら比企谷ってあって驚いたよ」
「…ま、とりあえず入れ」
「お邪魔するよ」
2人を中へ迎え入れ、葉山の背中にいた三浦をベッドへ寝かせる。部屋から戻った俺と葉山は炬燵に入った。
「………」
家に入れたはいいものの、三浦が起きるまで何を話せばいいか全くわからない。時間を見てもまだ5時40分前といったところで、三浦が起きるとは考えづらい。
「比企谷」
そんな気まずさを破るのはやはり葉山であり、流れるように会話を始めた。
「最近優美子と仲がいいのか?」
「まあ、そうだな。よく飲んだりしてるんだよ」
「なるほどね。ちなみに俺は優美子と飲んだことないよ。雪乃ちゃんなら何回かあるけどね」
「んな牽制されても困るだけだ。ちなみに俺は雪ノ下とサシでは飲んだことない」
俺の返しが意外だったのか、葉山は目を丸くした。しかしすぐに笑顔を取り戻す。
意外の中には、別の意味もあるんだろうけどな。一々言わないが。
「なんで優美子は比企谷の家を説明したんだろうね」
「意地の悪い質問だな」
「かもね」
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