第四話.国の重鎮の圧迫面接
─────袁家
「麗羽姉様ー」
「なんですか美羽さん」
「姉様はぽち兄様と結婚せんのかや? 兄様にはそういう話が沢山来とると聞いたのじゃ!」
「……美羽さん」
「麗羽姉様?」
「わたくしはぽちさんを必ずや手に入れてみせますわ。ですが今はまだその時ではありません。今のわたくしは袁家の娘、世間からそう見られています。わたくしの事を袁家という家柄しか世間は見ていないのです。ああ、ぽちさんはわたくし個人を見てくれていますが。ですがそれではあのぽちさんと釣り合いませんわ。わたくしが自身で地位も名誉も手にしてぽちさんを向かえに行きますわ!」
「おお! さすが麗羽姉様なのじゃ!」
釣り合っていないのは見た目だけの低能のぽちさんのほうだと突っ込む人間は袁家にはいない。縁談の相手を選ぶ権利を持つ、それだけの力が袁家にはある。次期当主がそう定めているのであればそれに向かって袁家は動く。ちなみに麗羽や美羽と真名を交換した際に、麗羽に付き従う袁家を支える家柄の顔家の顔良、文家の文醜とも真名を交換し、二人がぽちを様付けで呼んでる時点でお察しである。それをぽちは気付かぬフリをしている。鈍感なフリをして問題を先伸ばしにして誤魔化す駄目人間である。
さてさてその袁家で噂をされてるぽちに場面は移る。
ぽちは遂に面接にやってきたのだが、入室を躊躇っている。なんせその部屋の中から嫌な空気感がびんびんにしている。ぽちにはこの空気は経験がある。春蘭から無理矢理拉致られて山賊狩りに同行させられた時のような嫌な予感だ。
腕試しとか言ってならず者をぶったぎる春姉の後ろで無心になる俺ぽち。剣も持たず無手の俺は春姉が山賊相手に無双する様を後ろから能面のような顔でジッと眺めていた。春姉に何かあったらとか心配なんてしない。絶対無いからだ。だって春姉くそ強いもん。剣持っていたら戦ったかって? 俺が戦える訳無い。春姉に剣渡されたけど、いらねっつって返しました。「流石はぽち様」とか何故か言われましたが、少しでも俺の事思ってくれるなら連れてくるんじゃねえ。なんでそんな顔してたかって? 怖かったからと、さっさと帰りたかったからだよ。なんで俺が鉄火場に立ち会わなくちゃいけないんだよ。あの後しばらく肉食べられなくなったやんけ。
家に帰った時、「まあぽちも一緒なら問題無い事は分かっていたわ」とか華琳姉が言ってましたが何が分かってたんですかね。
まあ部屋の前でぼーっと立っていてもしょうがないので、仕方なく部屋の外から声を掛ける。
「曹犬、面接に参りました」
「来たか、遅いぞ。入れ」
高圧的な声が聞こえて来た。憂鬱だなと思いながら部屋の扉を開け、俺は固まった。数秒固まった後、部屋に入らず扉を閉めた。
……見間違い? あり得ない人居たような気がする。
「何をしている! 早く入れ! 私も暇ではない!」
「……曹犬、入ります」
覚悟を決めて扉を開く。うん、見間違いじゃない。何度か偉そうにしているの街で見た事ある。
「その顔は私が誰か分かっているようだな?」
「はい、何遂高大将軍のお顔は街で何度かお見掛けしました」
何進遂高大将軍。おいこの国の最高権力者の一人何してんだよ。
「……ここは下級文官の面接の部屋、だと思い参ったのですが」
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