chapter4.桃源郷
私が花立村にやってきて、1週間経った。ここでの生活も大分慣れてきた。
あれから私は出発の目処がたつまで、隆二さんの家の手伝いをしている。隆二さんの家も普段は農家をやっているので、田畑で野良仕事をする機会が多い。丁度お米の収穫期だ。なので人手がいる。だから私は手伝いをすることにした。今、私は手伝いにきた隆二さんの親戚の人とともに稲刈りをしている。
最初は中々上手くいかなかったが、時間が経つにつれて慣れたのか今はそれなりに上手く刈り取れている。
「未来ちゃぁん、少し休憩にしましょう」
隆二さんの姪っ子の大畠このはちゃんが声をかけてきた。
「はぁい」
このはちゃんがおにぎりとお茶を持ってきてくれていた。料理が上手なためみんなへの差し入れはこの子が作っている。
この子とは昨日知り合ったばかりだけど、直ぐに仲良くなった。足が速い子なので理由を聞いてみたら元陸上部の短距離走の選手だった。そのことから意気投合した。話の合う人というのは、内向的な私には有り難い。
そのまま夜通し話をした後だから、今日の稲刈りは大変なんだけど。
「ノイズ?」
「うん。液晶パネルみたいなのがついた怪物で形もバラバラなんだけど、触れると炭になってしまうんだ」
収穫が終わった日の夜、私はこのはちゃんの部屋で私の世界の話をしていた。
「未来ちゃんの世界にはそんなのがいるの?」
「私の世界はもうたまにしか出なくなったけど、ここの世界に来た時襲ってきたから一応伝えておこうと思って」
勿論隆二さんや親戚の方々にも伝えている。もしものことがあるからだ。まだ伝えていなかったのはこのはちゃんだけだ。それで今、携帯端末を使ってノイズの説明をしている。写真を見せたとき、このはちゃんは妙な顔つきをした。
「ちょっと待って。これ何年おきかに出てくる化け物じゃない。前は確か8年前だったかしら」
「それ本当!?どこかで見たの!?」
「私は見てないけど、見た人が言うにはキラキラ光るものがついた黒いタコみたいなやつだったらしいよ。白髪山で見かけたんだって。驚いて逃げてるうちに気づいたら居なくなってたんだって」
「黒い?」
「そう、黒」
黒いノイズ、まさかアレがいたとしたら大変だ。冷や汗をかきながら、私はこのはちゃんと話をしていた。
「ノイズを今までどうやって退治していたのかだって?」
「はい、教えてください。ノイズの中でも強力な個体が出るかもしれないので」
このはちゃんとおしゃべりした後、すぐに隆二さんのところへ行った。黒いノイズ、カルマノイズが出るかもしれないとなると報告したほうがいい。
「今まで、ノイズが山以外で目撃されたことがなかったからなぁ。あまり退治したことはないんだよ。ただ退治する手段がないわけじゃない」
「本当ですか!」
「ああ、うちに薙刀が一本あるんだ。あと太刀が一振り。それが対ノイズ用の武器でね。今まではそれで山から出た個体を倒してたんだよ……。ところで一つ聞いておきたいのだが、ノイズの中でも強力な個体と言ったね。それはなんだい?」
「それはカルマノイズっていうんです。このノイズは中途半端な攻撃が通用しない上に再生したり、無制限に人を殺せるんです」
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