第十一話
心が完全に折れてしまった、情けないと笑われても仕方がない。
ミリアが僕を庇うように前に出て構えているのを見て、僕は自信の情けなさに苛立ちを覚えると同時に、薄汚い考えが脳裏を過った。
――だって、仕方がないじゃないか――
ベル・クラネルは魔法もスキルもないただの少年で、ミリア・ノースリスは魔法も使えればスキルも覚えているのだ。
ベルなんかとミリアは比べるまでもなくミリアの方が優れている。
今まで、たった二週間の冒険のうちに何度ミリアに助けてもらった?
何度、ミリアの魔法を羨ましいと思った?
僕に出来ないのは魔法もスキルも無いからで、ミリアが出来るのは魔法もスキルもあるからじゃないか。
それにきっとミリアは怯えて動けない僕なんかと違って、こんなときにでも恐怖なんて覚えずに冷静にあの化け物を倒す方法を考えているに近いない。
だって、ここ二週間の冒険の最中、ミリアは一度も悲鳴をあげていない。僕が情けなく悲鳴をあげて逃げたコボルト五匹を難なく倒していた姿が脳裏を過った。
だから、仕方がないじゃないか。
そんな考え方をしたのも仕方がない。だって、ミリアはトクベツで、僕はフツウだったのだから。
そんな風に自分の情けなさに対して意味のない言い訳を繰り返している間にも、ミノタウロスは嘲る笑みを浮かべつつも余裕そうに歩いてくる。気丈に振る舞う幼い少女と、そんな少女に庇われる情けない少年。警戒するまでもないとでも言うような足取りで接近してくるその姿にベルは目を閉じた。
これは、きっと何かの夢で、目覚めたら呆れ顔で神様の抱擁から抜け出したミリアが「おはよう」と声をかけてきて、寝癖をなおして、冒険の準備をしてから、神様に「いってきます」と声をかける。
だから、早く夢から覚めてほしい。
「『ファイアッ』」
ミリアの魔法が発動した。直線上にあるものを貫通してダメージを与える魔法。そんなものが使えるから僕と違ってあの恐ろしいミノタウロスに立ち向かえるんだ、このあとはいつも通り魔石を回収して――
「あぁ、もうっ! 私は何してるのよ」
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