ハーメルン
とある海賊の奇妙な冒険記
二つの海賊団

「ん? なんだ?」

 先ほどちょっとした戦闘で傷がついたため、船――サウザンドサニー号を修理していたフランキーが、こちらに向かってくる人影に気が付いた。
 数は二十人くらいだろうか。見るからにガラの悪い恰好をしており、一目で同業者……海賊だと分かった。
 恐らく、麦わらの名を聞いて名声を取りに来たのだろう。体に仕込まれた兵器の調子を確認しながら、フランキーはこの船に残った二人の仲間に声をかけた。

「おい! 敵が来たぞ!」
「え!? マジかよおい!」
「聞いた通り治安が悪いんだな……ご苦労なこって」

 報告を聞いたウソップは震え上がってビビり、サンジは煙草の煙を吹きながら立ち上がる。ナミに頼まれて留守番していたが、まさか本当に来るとは思わなかったようで、海賊の柄の悪さと欲深さに呆れの声を出した。

「……」

 先日の傷は、もう癒えている。ゾロの献身によって。
 次にあのような強敵が来れば――そんな事を考えつつ、彼は船の上から敵の姿を確認した。
 敵は、ゾロゾロと船に近づく。しかし、何処か様子がおかしい。武器を持っておらず、顔は緊張して、そして敵意が感じられない。
 どういうことだ? 違和感に眉を潜めていると、近づいてきた海賊がこちらに向かって大きな声で次のように述べた。

「――此処に、狙撃の王様そげキングが居るのを確認した!! 話がある! どうか、船に上げて貰えないだろうか!!」


「……お呼びだぞ、そげキング」
「なんでじゃああああ!!??」

 お目当てはどうやらウソップなようで、指名されたウソップが卒倒しそうなほど顔を真っ青にさせて絶叫した。
 え? なにかした? ……しましたね。でも、他の奴らと比べたら可愛いもんだろうおれは!? とウソップは内心混乱しまくっていた。

「早く追っ払ってくれよ。船を直してーんだ」
「宝が目当てじゃないなら良いか。ナミさんも許してくれる」
「鬼か貴様ら!?」

「あの! お返事は!?」

「ひい!?」

 切迫した状況ではないからか、サンジとフランキーは素っ気ない。
 どうやら一人で切り抜けないといけないようで、急かしてくる海賊の前に嫌々ながらウソップは姿を現した。……そげキングとして。

「私に何か用かね、海賊の諸君!」

 仮面とマントを身に着け、腕を組むその姿に彼らがどよめきの声を上げる。
 口々に「手配書と同じだ」「あれが、世界政府の旗を撃った……」「なんか、貫禄あるな」と評価を口にする。その反応にウソップは、あれ? これ意外とイケるんじゃね? と思い直した。このまま堂々としていれば、彼らは逃げ出すかもしれない。

「あの、すみません! あなたがシロップ村のウソップですか!?」
「――」

 そんな楽観的な考えは吹き飛んでしまったが。
 どういうわけか、彼らはウソップの正体を見破っていた。ご丁寧に出身地を添えて。頭が真っ白になり、ウソップは体を硬直させた。そげキングとして手配書に載っていた安心感が打ち壊され、心臓がキュッとなる。
 サンジとフランキーも流石に妙だと思ったのか、眉を顰めて彼らを見た。もしかしたら、厄介な相手なのかもしれない。とりあえずウソップには相手から情報を引き出して貰おうと思い……。

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