ハーメルン
とある海賊の奇妙な冒険記
天竜人

「――特製シャボン玉だと?」
「はい、現在シャボンディ諸島には凶悪な海賊が滞在しているらしく……海軍本部元帥センゴクが是非着用を、と連絡があり……」

 時は遡って、ロズワード一家がシャボンディ諸島に到着した頃。
 彼らは、護衛の男からセンゴクの伝言を聞いていた。
 ジョットがシャボンディ諸島に上陸している事は、既に海軍及び世界政府の耳に届いている。他にも超新星が集い、現在シャボンディ諸島は政府から見て危険な状態だと言える。そんな中ロズワード一家がシャボンディ諸島に訪れるのは、火薬に火をつけるのと同じ行為。しかし、世界貴族に『シャボンディ諸島に行くのは止めてくれ』と懇願する事もできず、センゴクは妥協案として特製シャボン玉で万が一(・・・)に備えて身を守る為の手段を講じたのだが……。

「ふん。海軍ごときが生意気だえ。気に入らない。そんなもの、捨て置くえ」
「しかし、ロズワード聖。御身にもしもの事がありましたら……」
「なんだ、お前。世界貴族たるこの私に意見するのかえ。生意気だえ」
「え。いや、そんな事は――」

 銃声が三発響いた。心臓を打たれた男は、そのまま倒れて血を流し……絶命。
 心底不愉快だと顔を歪めながら、ロズワード聖はシャボンディ諸島に上陸しようと娘と息子に声をかける。

「行くぞシャルリア。チャルロス」
「はい、お父様」
「う~ん……?」

 しかし、チャルロス聖はセンゴクが用意した特製シャボン玉が気になったのか、ジロジロと見つめている。
 横から、上から、下から覗き込む。
 目新しいからだろうか。チャルロス聖は近くの護衛の男に尋ねた。

「これって凄いのかね?」
「はい。何でも、海軍の有名な科学者が作り上げた防御性に特化した代物らしく……迫撃砲を受けても割れないだとか」
「良く分かんないけど、付けてみるえ」

 そう言うと、チャルロス聖は特製シャボン玉を装着した。
 すると、何処となく心地良い感触がした。吸う空気も美味しく感じ、朝から感じていた鼻づまりも解消されてスッキリ。
 外界からの脅威を防ぐ以外にも、傷や体調を癒す効果があるらしい。
 ――これは、良い拾い物だえ。
 父親と妹が付けなかったシャボン玉の効果に笑みを浮かべた。チャルロス聖は鼻歌混じりに喜ぶと、早速自慢しようと父親達に目を向けたところ……。

「あれ? お父様たちは何処に行ったえ?」
「お先に参られました」
「なに!? 何でそれを早く言わないえ!」

 パンッとまた一つ銃声の音が辺りに響いた。

「まったく、早くお父様の所に行くえ」

 こうして、チャルロス聖は特製シャボン玉を装着した状態でシャボンディ諸島に上陸した。
 その結果、自分が酷い目に遭うと知らずに……。


▲▽▲▽▲▽


「まさか、アンタが冥王シルバーズ・レイリーだったとはな……レイさん。いや、レイリーさん」
「あまりその名で呼んでくれるな。海軍にバレると厄介だからな」

 ヒューマンショップの従業員を気絶させ、牢屋に辿り着いたジョットはレイさん……レイリーと再会していた。
 幼き頃東の海で出会った父親の知り合いが、まさか海賊王の右腕だとは知らず驚いたらしい。普段ほとんど顔色を変えないジョットにしては珍しく表情を変えていた。

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