麦わらと星屑
海軍を振り切った麦わらの一味とジョットたちは、シャッキーの元へと帰還し、そこで様々な話を聞いた。
レイリーの正体。海賊王の公開処刑の真実。ポーネグリフ。
レイリーは、海賊が……いや、世界が知りたい情報を幾つも知っていた。
途中ウソップがひとつなぎの大宝が最後の島に存在するのか聞こうとしてひと悶着あったが……レイリーからの話は一段落した。
流れで話を聞いていたジョットは、今まで密かに抱いていた疑問が氷解して、ルフィへと視線を向けていた。
「何処かで見たと思っていたが……麦わら。お前のその帽子、シャンクスから託されたモノだったんだな」
「ん? おめぇシャンクスを知っているのか?」
「ああ。……アイツは、オレの憧れの人だ」
「……!」
「もしアイツと出会わなかったら……オレは海賊王を目指さず、海軍か賞金稼ぎにでもなっていただろう」
レイリーの話と麦わら帽子を見て、ジョットは遠い記憶の日の事を思い出す。
やりたい事が見つからず、親父に言われるまま体を鍛える何処か惰性的な日々。あの時のジョットには、人として生きる根っこの部分が無かった。
それを変えたのがシャンクスだ。
ジョットは普段誰にも口にしないが……ルフィの前では饒舌に語った。
「オレは、アイツ……いやあの人に感謝している。だから嬉しいんだ……シャンクスが己の宝物を託した海賊と、こうして会えたのが」
「……ししし! おれも嬉しいぞ! 同じようにシャンクスに憧れた奴が居てよ!」
「だが、ひとつなぎの大秘宝を見つけるのはオレだ。友の恩人といえど、これだけは譲れねえ」
「なんだと! ひとつなぎの大秘宝を見つけるのはおれだ! ……ん? 恩人?」
ジョットの言葉に憤っていたルフィだったが、言葉の隅に気になるものを見つけて首を傾げる。その言葉に反応を示したのは――ナミだった。
ジョットの視線が彼女に向かう。
「偉大なる航路に入る前に――ベルメールさんの所に行った。そして、足を怪我しているのを見た」
「……」
「ハチからも話を聞いた。……お前らにとっては終わった事で、ナミにとっては思い出したくない事かもしれねえ。――だが、言わせてくれ」
そう言って、ジョットは椅子から立ち上がって――麦わらの一味に向かって土下座をした。
「――ナミを、ノジコを、ベルメールさんを……ココヤシ村の皆を救ってくれてありがとう! そして、気づかなくてすまなかった、ナミ!」
「……!」
ジョットは、ずっと後悔していた。
もし、自分がもっと早く気づいていれば……ナミの苦しみを和らげる事ができたのではないか? IFの話であり得ない話だが、それと同時にあり得た話でもある。
気づかなかったのだから仕方ない。そう思うには……ジョットは強かった。救う事ができる人間が救えなかったのだ。
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