ハーメルン
キノの旅 ―the Infinite World―
第7話 依頼主の話 ―Mastermind―
「と、いうわけで。君にはこの依頼を受けて欲しい」
「…………なるほど。了解しました」
机の上に置いてあった飲み物を一気に飲み干して、キノは立ち上がる。
まだメインジョブである【操縦士】のレベルを上げている最中であり、合計レベルが50に達していない以上紛れもなく自分がルーキーと呼ばれる存在だと自覚はしている。
それでも、話を聞き、戦力に乏しい自分でもなんとか成し遂げられそうな依頼であると考えてキノは依頼を引き受けた。
「そういうわけで、これから隣の街へ向かうことになったよ、ヘルメス」
『りょうかーい。でもキノ、道中は何が出るかわからないよ?』
「もちろん、基本逃げる。ヘルメスならそれなりの速度は出るんだし大丈夫だよ、きっと」
ドライフ皇国の首都、ヴァンデルヘイムでキノは手で押しているバイクへとこれからの予定を伝えた。
先日第1形態へと進化してその姿を見せたキノのエンブリオ。
TYPE:チャリオッツで自我を持ち喋るバイク。それがヘルメスだ。
ヘルメスのスキルである《走行》スキルは、エンブリオであるからか《操縦》スキルがなくとも運転することはできる仕様だった。
しかしだからといってスキルをとる意味がないわけではない。《操縦》スキルのレベルが上がればその分ヘルメスの《走行》も効果が上乗せされる。だからキノは最初に上げるジョブとして【操縦士】を選んだのだ。
しばらく歩くと、キノは目的の人物を見つける。
向こう側もキノのことに気がついたのか、手を振ってキノを呼ぶ。
「無事合流できましたね。用意の方は終わりましたか?」
「ああ、待たせて悪かったな。これが依頼の品物だ」
この<マスター>の名はグラシャン。
バイクのエンブリオを持ち、冒険者ギルドで配達依頼を受けようとしていたキノを見つけると、同じ目的地である隣町まで一緒に運んで欲しいものがあると依頼してきたのだ。
用意があるからとその場で一旦分かれ、ここで合流したということになる。
グラシャンはアイテムボックスから厳重に梱包された箱を取り出すと、それとは別に【契約書】と呼ばれるアイテムを取り出してキノへと見せる。
「マスター間の配達依頼だしな、念のため頼むわ。内容を確認してくれ」
【契約書】はマスター間で約束事を決めるときなどに用いられるアイテム。
内容を反故にしたものにはステータス低下やデスペナルティなどの罰則が発生する。
今回提示された【契約書】には、「キノが配達依頼を完了した後、その完了通告をもってグラシャンはキノに報酬を支払うこと」「キノは配達する荷物を横領してはいけない」「キノが自らの都合で期限内に配達できなかった場合、荷物の返品と罰金の支払いを行う」の三つが記載されていた。
「あんたが予期せぬ相手に襲われた、ならともかく狩りをしてたらデスペナルティになって間に合いませんでした、とかだと契約書に引っかかるからな、気をつけてくれよ」
「はい。余裕がそこまであるわけでもないし、買い物をしたら出発しようと思います」
「それじゃ頼んだぜ。このルートで行けばモンスターとかもそう強いのは出ないと思うからよ」
教えられたルートを頭に入れ、キノはグラシャンと別れた。
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