ハーメルン
僕が響になったから
halo destroyer

 ゴスロリの恰好で街を歩くこと暫く。既に両手で数えられないほどの写真を撮られて疲れた僕は、昨日夕日をみていた公園へと足を運んでいた。時間も丁度夕方で、昨日と変わらず美しい夕日が街を茜色に染め上げている。

 昨日今日とこの体に慣れるために散歩をしていたけれど、成果はかなりのものだと思う。

 夕日を見ながら、ちょっとだけ黄昏を感じていた。最初は現実を受け入れるのに戸惑ったけれど、今となってはこの体になってよかったなと思っている。男の土方のままではきっと、数十年土方をやって平凡に生きていただろう。でも、これだけ綺麗な体に生まれ変わって、女性として街を歩いてみたら、僕の住んでいた町は魅力的で、人々は皆輝いていると感じる。そして響ボディは可愛い。

 本当に残念なのは、響ボディの中身が僕ということぐらいだ。可愛らしい響を見るには鏡の前に立つか、写真をみなくちゃならない。そして綺麗になる努力も僕がしなくちゃいけない。でも、まぁ、響が可愛いので頑張ろうと思う。

「あ、もしかして昨日の!」

 と、黄昏ていたら、背中から声をかけられていた。振り返ると、昨日、猫を渡したお姉さんが笑顔で立っていた。

「あ、どうも」
「昨日は猫ちゃんをありがとう!」
「いえ。野良ネコでしたし。そういえば、あのあと猫はどうしたんですか?」
「ん、ええと、大人しいし、可愛かったから家に持って帰っちゃった」

 お姉さんはちょっと恥ずかしそうな笑みを浮かべていた。そうか、僕が助けたあの猫は、飼い猫になれたのか。

「あはは。もしよかったら今度、猫ちゃんを触りに家に来る?」
「いいんですか?」
「もちろんよ!」

 おお、あのふかふかの猫にまた触れるのだったら、大歓迎だ!

「あ、そうそう。それで昨日聞きそびれちゃったことがあるんだけど」
「なんでしょう?」
「貴女の名前はなんていうのかしら?私はすみれっていうの」
「すみれさん。私は工藤響と言います」
「そうなんだ!響ちゃん、これからよろしくね!」
「こちらこそよろしくお願いします」

 なるほど、すみれさんか。それにしても笑顔が綺麗な女性だと思う。それに何より声が綺麗だし、聞き取りやすい。…おっといけない、そろそろ時間が無くなってきた。名残惜しいけれど、そろそろ家路につくとしよう。

「あ、すいません。そろそろ日が暮れてしまうので、私はそろそろ家に帰ります」
「あは、判ったわ。ええと、ちょっとまってね」

 すみれさんはそういうと、メモ用紙にさらっと何かを書いて僕に差し出していた。

「これ、私の電話番号。いつでも電話してきてね」
「ありがとうございます。それじゃあ、すみれさん。また今度!」
「うん、響ちゃん。またね!」

 僕は公園を後にする。うん、この体で初めての友達…と言えそうなひとが僕にも出来たようだ。うん、アルバイトが落ち着いたら、さっそく電話をしてみようと思う。



 夕日もすっかりと沈み、闇が街を覆う頃に僕は家へと急いでいた。

 ここは昨日猫を助けに飛び降りた用水路にかかる橋だね。うん。我ながらよく猫を助けられたと思う。と、感慨に浸っていたところ、背後からふらふらと歩いてくる人影があった。あれは…よっぱらいという奴だね。すごくふらふらしている。大丈夫かな?

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析